簪さんの事情
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二日目が無事に終わり、部屋に戻る。まだ更識は戻ってないようだ。
例のごとく勉強を始める。今回は阪大の過去問をやってみる。まぁ、ほとんど答覚えたけど
15分くらいして、更識が帰ってくる。
「おかえり」
何も言わないのもなんなので一声かける。
「…ただいま…」
それだけ言って彼女はテレビをつける。
「…黒鉄くんってレイヴン社の御曹司だよね…?」
突然のことに若干驚く。彼女から話しかけてくるとは思わなかった。
「そうだが、それが何か?」
「レイヴン社ってISも作っているよね?」
「ああ、俺も専用機をもらってる」
「…羨ましい…」
「何故だ?」
「私の専用機、開発スタッフが別の機体の開発に動員されて、完成していないから…」
予想外のことを言われる。そいつら、技術者としてのプライドがあるのか?
「それで、どうしたいんだ?ウチの会社に受注するのか?」
「……いい、やめておく…」
一瞬迷ったように見えたが…。何か協力してやりたいな。
「まぁ、ウチの開発スタッフを使いたいなら言ってくれ。役に立つと思う」
「うん…」
途中放棄とか、技術者の風上にもおけないな。
たしか、日本国内でレイヴン社以外でIS作ってるのは倉持技研だけだったはず。すると彼女の機体は倉持製か。
あそこはあそこで独自の技術を持っているが、総合的な水準ならレイヴン社の方が上だ。
…1からこっちで開発した方が早い気がしてきた。
こうして考えると俺は恵まれているよな。豊富な資金と優秀なスタッフたちの下で開発された専用機をもらえる、端からみればそうとう羨ましいことだろう。
さっきは断られたが、本音では開発を手伝ってほしいんだろうな。
――――――――――――――――――
side簪
なんで…断ってしまったんだろう…?
彼は明らかに善意で言ってくれた。全く見返りなんて求めてない。
このままでは絶対に完成しない。彼の手を借りたい。
でもそれじゃあお姉ちゃんに追い付けない…。
私は…どうしたらいいの?
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