喰らい乱して昇り行く
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、たっぷりと時間を待ってから、声を上げた。
「では孫策、汝が袁術に反旗を翻したるに至った経緯を述べよ」
白々しい……と思いつつも顔には出さず、雪蓮はつらつらと説明を述べて行く。
当たり障りのない、何処にでもある“正義”のカタチ。
自分達が伸し上がるという欲望を表に出さず、漢の終わりを示唆もせず、耳に聞こえの良い理由を並べ立て、自身は忠臣であるのだと示すだけ。
袁家の重税に喘ぐ民の声、どれだけの不満が出ていたか、どれだけ民に縋られたか。
話しながら、隣で小さな笑いが漏れる。雪蓮と冥琳の耳に入る程度の小さな嘲り。つまらないな、とでも言いたげな、心底から見下した嘲笑。
怒りがあった。封じ込めたはずだが、それでも燃え広がりそうになる炎があった。
されどもそれは母の残した欲望の最果て。虎はこの龍に負けたのだ。どれだけ綺麗に繕おうとも、母は大陸の悪でしかない。覇を進めた後の敗者とは一切の例外なく……悪。
揚州の太守であった先代の虎、孫堅。自分と同じく戦場を駆けぬけた虎は、その勇猛さ故に、政治戦略に嵌り、龍と争って命を落とした。
勝てば官軍、負ければ賊軍とはよく言ったモノだ。雪蓮達は敗者として全てを失い、泥濘の中を足掻く事になったのだから。
こちらを見つめる華琳の瞳は雪蓮の器を量っているかに思えた。だが、何処か違う。公平に物事を見るモノなれど……何処か物足りなさを感じ取らせる視線。
――なに……? 連合時はあれだけ期待の色を浮かべていたというのに……
理由は分からず、それでも雪蓮は説明を終える。
静寂が耳に痛い。汗が少しばかり背中に伝う。気持ち悪くて身を捩りたくなった。
雪蓮と劉表よりも高い位置に立つ華琳の艶やかな桜色の唇が、小さく、ほんの小さく吊り上る。笑みが見えて、雪蓮は真っ直ぐに視線を合わせた。
乗り越えてみせろ、というような不敵な笑みは……前ならば楽しいモノであったはずなのに、不快でしかなかった。
「陛下への叛意は無い、と。ならば劉州牧の治める地を侵す前に、私か劉備を頼れば良かったのではないか?」
「……っ」
――この女っ! そちらから言い出した事でしょう!?
毒づくも、口には出さない、いや、出せない。出してはならない。
華琳は部下を切り捨てているのだ。交渉の席に送った稟を、独断でやったと切り捨てる事になんら躊躇いが無い。汚職に塗れた官僚のやり口でしかないのに……それを自身が一番嫌うはずなのに……華琳はそれを是としている……そう考えてしまう。
――誇り無い……堕ちたかっ! 曹孟徳!
ギリ、と歯を噛みしめた。何が覇王。お前はその道を歩んで満足なのか、と。
(違うぞ、雪蓮)
小さな呟きが聴こえた。劉表に聞こえるのも気にせずに、後ろから掛
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