喰らい乱して昇り行く
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をしているのがまざまざと分かる。それでも、彼女の身体を気遣うモノは居ない。
詮議の場だ。文官の意見を汲み取るべきだ。だというのに……この場に残されたのはたった四人。
命じたのは、大陸の絶対者――――劉協。
華琳一人で事足りる、と他を下がらせたその真意は……劉表の倒れる姿を同格の者達以外誰にも見せたくなかったのが一つ。孫呉への不信感が場に広がり過ぎるのを抑えたかったのも一つ。
その二点を見れば、劉協はやはり聡明な皇帝なのだ、と言えるだろう。
帝の言に不満が直接出るわけも無いのは当然ではあるが、真っ白な純白の礼服を着た、まるで死装束を纏っているかのような龍を見れば、皆は目を伏せて下がる他無かった。
何が其処まで彼女にさせるのだ。
文官達は思った。
思うだけで誰にも分からない。命を賭ける程、散り際の最期まで自分の信じた道に殉じようとする彼女の心など、分かるはずも無い。
ある者はその姿に畏怖を感じて、ある者は誇り高さを感じて、ある者は憧憬を感じて、下がっていくだけであった。
四人だけの部屋の中、雪蓮も、冥琳も、昨日の夜に話していた事が頭から飛びそうになる程の衝撃を受けていた。
――なん……なの? なんでこんな状態で此処に来たのよ。
一度だけこちらを見た龍は悪辣な笑みを浮かべていた。死にかけにしか見えないのに、灼眼は活力の輝きが溢れていた。
悪寒が這いずりまわる気持ち悪い笑みは、死にかけで呪いを掛けた紀霊よりも不気味であるのに、悪戯好きな子供のように晴れやかにも見えた。
ああ、そうか、と雪蓮は気付く。
――こいつは楽しんでいる。心底から、この“戦”を楽しんでいるんだ。
寝台で緩やかな死を待つか、戦って死ぬか。
劉表は弁舌で戦う戦場に身を置く者なれば、此処に来た意味はそういう事だ。
雪蓮なら、病に侵されていようと戦場で皆に王たらんと示し、最期まで剣を振るを選ぶだろう。それと同じく、劉表もそれを示している。
「キヒ……娘はあのクソだりぃ虎よりまだマシか。あいつみたく自分ばっかり見てたら良かったのに」
どうにか聞こえるくらいの声で零されたのは称賛。母よりも認めていると取れるが、貶す事も忘れないあたり見下しているのは変わりないらしい。
同じく聞こえていたのか、華琳が劉表を睨みつけた。死者を貶めるなと、殺気が突き刺さる。
怖い怖い、と肩を竦めるだけで表し、たおやかに劉表は顔を伏せた。
「陛下、此度の“詮議”、開始致します」
凛……と声が響き、小さく頷かれただけで冷たい空気が場に行き渡る。
詮議と言い切った。華琳はあくまで第三者の立場を貫くと言っている。雪蓮の手助けはなんらしてやらないから……己が力だけで切り拓け、と。
華琳がお辞儀を一つ行い
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