喰らい乱して昇り行く
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かすら……劉表が生きている限り時機を見なければならなかったのだろう。冥琳の考えはそんな所。
それでも押し通したいと願った蓮華。あの子は……このままじゃ潰れるかもしれない。がむしゃらに走るのもいいけど、周りに目を向けられなければ不和が起こる。亞莎達だけでなく、他の文官達にも目を向けてくれるだろうか。
「荊州で怪しい動きもある。豪族達も尻尾を振り直すかもしれん。孫呉はまだまだ危うい橋を渡っているのだ。私達が此処に居る間に起こる次の戦で勝てなければ、全てが水の泡になるだろうな」
「え!? もう戦が起こるなんて聞いてないわよ!?」
驚愕。
蓮華への思考を無理やり切り替えさせられた。
私が居ない隙に何かが起こるとは思ってもみなかった。忙しすぎて情報が入っていない……いや、そんな重要な情報なら、冥琳がわざと止めていたはず。
冥琳はどうして行ってくれなかったのか、責める視線で見つめると、哀しげにため息を吐いた。
「……だから今まで話さなかったんだ。お前は必ず残ると言ったろう?」
「当たり前でしょう!?」
劉表の命は放っておいても終わる。一矢報いれないのは悔しくとも、孫呉という家族の命の方が大事だ。この危うい時期では豪族達の内部反乱も在り得るし、せっかく取り戻した家が崩れかねない。漢を終わらせるなら帝の心象よりもそちらの方が大事だ。それが分からない冥琳でもなかろうに。
じとっと見据える視線は冷たい。知性の輝きは……昏いモノだった。
「雪蓮……孫呉は負けないわ。あなたか、蓮華様か、小蓮様が居る限り――――」
「それでもっ……っ」
言葉を呑み込む。
じ……と見やる目が細められた。寒気のするような冷気が漂う。彼女はきっと、心底怒っている。誰に対してか……私も含む全てに、だ。
「劉表の策は見事と言っていい。二者択一のどちらを選んでも我らは甚大な被害を受ける。だがな、より大きな被害は……お前が残って大陸全てに対する敵対を示す事だ」
「そんなのこの乱世じゃ……」
――もう関係ないでしょう。
言えなかった。気付いてしまった。残ればどうなるか、自分の家族を守りに行けば、自分が何になってしまうか。
「そうだ。劉表の一手は虎を殺す為、幾重にも糸を絡ませた強力なモノ。劉表や曹操のように上洛しない時点で……戦を優先した袁家と同類に成り下がる。大徳の風評など消え失せ、せっかくこちら寄りになった豪族達は必ず掌を翻し、揚州内部に猛毒が出来上がるだろう。
何より、建業に居る時にお前が残りたい意思を少しでも表せば……小蓮様が耐えられなくなり、蓮華様に芽生えた想いすらお前と私が喰い散らかしてしまう事になる」
あの子達の為にも、これからの家の為にも、私は王たる孫策を示すべき。そういうこと。
袁術、
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