喰らい乱して昇り行く
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彼ら”が到着する間も無く、大きな情報が入る。それは雪蓮も、冥琳も予想していた最悪の情報。
『孫呉の地に呂布率いる劉表軍が攻め入った』
乱世の大陸に誰もが糸を引き合う中、華琳は一人……笑みを深めていた。
蛇足 〜龍に敬意を〜
その報を受けて頭に浮かんだのは……不思議な事に納得だった。
よくよく考えれば有り得た手だ。初めから自分の命を対価として差し出した戦。最後に幕を引くのは彼女自身でなければならない。
孫呉からすれば、掻き乱すだけ掻き乱しておいて勝ち逃げされたカタチとなる。あの女らしい悪辣な終わらせ方だ。
一応、暗殺の可能性がある限り、私が調べなければならないのは当然で……孫策と周瑜は都に留まらざるを得ない。
劉表の亡骸は荊州へと送られる。彼女が連れていた一万の兵全てをそれに当てた。この場に留まらせれば、何が起こってもおかしくないが故に。
名だたる将とは行かずとも、古くから仕えていたという千人将達は、不満も漏らさずに従ってくれた。
見送りの日。
彼女の顔をもう一度だけ見せて貰った。
晴れやかな笑みは、口を引き裂いていた彼女とは違うモノ。
きっと満足して死んだのだろう。それが少し……羨ましく感じた。
城壁の外まで見送った、棺の乗せられた馬車が見えなくなるまで。私がそうしたかったのだ。
「短くとも楽しい時間をありがとう。あなたの生き様に敬意を。そして……」
見えなくなってから、光の差し込む空を見上げて、ゆっくりと言葉を溶かした。
「残した策を全て打ち崩す事で……私の勝ちを示しましょう」
彼女の笑い声が聞こえた気がした。あの時みたいに、私の負けだと言うのだろう。
幾分、目を閉じる。
黙祷を捧げ、平穏な世を作ると誓いを立てる。
彼女の望んだ平穏を作るつもりは無く、私が望む平穏を見せつけよう。
だから、いつもとは少し違う。
乱世を私が治めることこそが、彼女に対する最大の敬意の表し方。
「その時は……あなたの知らない“私の妹”と一緒に、甘いお菓子をたくさん供物として捧げてあげる」
くるりと背を向けて、今も戦っているであろう愛しいモノ達が居る方角を見据えた。
一陣、強い風が吹いた。遠くまで何でも運んでくれそうな向かい風。
「ふふっ……いいわね。あなたも気になっていたようだし……あの大嘘つきが作ったカタチだけれど、手向けとして一つ、風に乗せてこの言葉を送りましょう」
不敵な笑みに獰猛さを宿して、いつもの調子で声を紡ぐ。
戦っている愛しい臣下達を想いながら、これから乗り越えて行く乱世を想いながら。そして……もう二度と戦えなくなった愛しい敵を想いながら
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