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乱世の確率事象改変
喰らい乱して昇り行く
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袁家なんざオレと一緒に潰せたんだから。言ってこなかったのはなんでだ?」

 昏い暗い声が響いた。金髪が揺れ、灼眼が燃えていた。
 雪蓮達が出来るはずもなかった“もしも”の提案。分かっているはずだろうに、と毒づきながらも二人は呑み込む。

「ケホ……貴様ら……この大陸をなんだと思ってやがる?」
「抑えよ、劉州牧」
「いいや、もう余命も少ねぇから抑えてやれねーな。貴様らの親はオレに喧嘩を打った。オレはわざわざ買ってやって……勝った。全てを殺さなかったのは陛下の温情だ。それでいて尚、袁に踊らされて二度目の牙を剥いた。他の家に迷惑を掛けて謝りにも来やがらないんだぜ? それだけでも笑えねーのに、妹の為に、だとよ」

 殺意が揺れる眼には、見下しと蔑みが存分に含まれていた。
 演技だろうと、華琳は思う。しかしてその様相は、余りに見事に完成されていた。劉表は、この場に居る誰よりも長く、王の務めを果たして来た為に。
 これから言うであろう言葉を、華琳は分かっていて止めない。止めても言い切る。
 人の口を無理矢理塞ぐには、実力行使しか成り得ない。帝の前でだけは、武力を翳してはならない。

「口先ではなんとでも言える。叛意があるかは疑い出したらきりがねー。オレんとこでも部下が裏切りやがったからな。だけどせめて……」

 少しだけ、劉表は斜めに身体をずらし、劉協に見えないようにだけ、舌を出す。これから食べるモノを楽しもうと。
 笑みは浮かべず目を細め、冷たく昏い瞳で……龍は虎を見下ろす。

「跪け。陛下に、劉の名に跪け、孫家。この場で頭を垂れ、永久の忠を誓え、飼い猫」

 激発の声ではない。絶対零度の冷たさを持つ、冷たい怒りの声であった。
 雪蓮の瞳に屈辱が燃える。冥琳の目は凍土のように冷たく凍った。 
 少し前に、劉表は華琳と帝に胸中を示して頭を下げた。華琳も帝に頭を垂れた。それが帝の前で出来ないとは……言えるはずもない。
 華琳は帝に目を向けた。此処で裁くのは華琳の仕事。罪を断じるが、重さを間違ってはいけない。
 帝はさもつまらないモノを見るように、彼女達のやり取りを見ていた。止める気はないと、その態度だけで分かる。

――趣味が悪い言い方ではあるけれど……これを“劉表が”言わなければ私達が描く絵図には辿り着けない。

 華琳は孫呉の二人を思いやる事は無く。ただ純粋に、結果のみを求めた。貸し借りはある。対価も既に決めてあった。
 二人の身体が曲がる……前に、凛と鈴の音のような声が響いた。

「陛下の御前にて耳に聞き苦しい言葉の数々。私の制止も聞かないとは、もはや正常な判断すら出来ぬであろう……劉州牧、この場よりの退場を命ずる」

 殺気立った目線がそのまま華琳に向けられた。二つの双眸を呑み込んで、覇気溢れる瞳
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