喰らい乱して昇り行く
[12/19]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、この大切な時に、孫呉全てが形振り構わず牙を剥くぞ、と。
一瞬だけ、華琳に鋭い眼光が向けられた。獰猛な虎を思わせる視線に、歓喜が込み上げる。
――さすがは孫策。抜け目ない。
同時に……政治政略で“彼女”に勝てない事が分かってしまった。
――でもあなたは見誤った。私はこの場では第三者。こちらは袁を、そちらは劉をと……雛里に伝えさせたでしょうに。あなたが戦うべきなのは……悪龍ただ一人。
雪蓮が孫策であるが故に、それを貫いてしまえば他が動く。
劉表がまた、息を漏らした。ケホ、と喉に絡む堰が粘りつく。
「差し込む発言、失礼してもよろしいでしょうか?」
唐突に割って入った彼女に、雪蓮も、冥琳も唖然とする。こんな所で何を……と。
華琳だけは楽しげだった。表情は変わらずとも、呆れたように、悪戯をする子供を見るように劉表を見やる。
「構わない。申して見よ」
「ありがたく……では言わせて貰おう。孫策、貴様の部下には無能しか居ないのか?」
舌で一つ唇を舐めてからの言は、鋭利な鉤爪で引き裂くかの如く。
曹操が許そうとも、自分は責を個人だけには終わらせてやらない。そう、言っているのだ。
「特にお前だ。後ろの……断金とか、美周嬢、とか言われてる奴だったか? 我欲に走った主を止められない臣下に価値なんざあるのか? 頭に乗ってるのが出来の悪い帽子置きじゃあ、智者なんて言えねーんだが……どうなんだよ」
投げ捨てられた言葉遣いは見下しから。引き裂かれた笑みを向けられ、冥琳と雪蓮から激情の気が燃ゆる。
されども真理。“漢が作った大陸の平穏”は、虫の息でも確かに存在する。妹の命をそれより優先させるのは、儒教社会に於いて美徳であろうと、家族よりも守るべきモノと定められている帝を貶めている事に他ならない。
臣下であれば、大陸の全ての為政者が優先するモノを説くのは当たり前の事であろう。
相手が悪い。弓を引き、刃を向けた相手は龍の血脈なのだから。劉表だけは、孫呉を責めていい。
「袁術の悪政を止められなかったバカ共と同じで、お前らもそうなってくって分からねーのか? 結局お前らは袁家となんら変わんねーじゃねーか」
「劉州牧。陛下の御前である。己が地を穢された怒りはあろうと言葉を慎め」
「……失礼致しました」
華琳に止められ、キヒ……と俯けた顔から笑いが漏れた。雪蓮と冥琳にだけ聞こえるように。
真っ青になったのは、冥琳。雪蓮のやり方からの繋ぎも用意していたが、よもや自分がそういった対価を払ったにも関わらずに、劉表が其処を攻めるとは思わなかった。
劉表の狙いが、予想した程度では読み切れなかったのだ。
責の所在が何処にあるか、あの時の華琳は劉表に問いかけてもいた。よって、劉表の言を広げ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ