喰らい乱して昇り行く
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異端者たちが思い描く乱世の絵図は、幾重も在ったのだ。
劉表は……袁家、否、七乃の狙い――美羽が袁家筆頭になる事を予測して、揚州を掻き混ぜる為に雪蓮達を放っておいた。二つに分かたれた名家の内、隣に出来た一つを潰そうとしていたのだ。虎の子の能力を見極めて、袁家崩壊を……自分で動く事無く、戦う事無くやってのけた。それが答え。
そのように、皆が敗北者の孫呉を駒として扱い、乱世を描いていた。
先帝の、親の話をされては劉協は何も言えない。彼女が携わったモノでないのだから、責める事も出来ない。
大きく深く、雪蓮は一息ついた。自分達が駒でしかなかったと気付いても、もう違うから……と苛立ちが募る心を落ち着かせようと。
「袁術に客分として身を寄せた我ら孫呉の者達は、それからというモノ大陸の平穏の為にと微力ながらお力添えをさせて頂きました……が、客分として身を寄せている間に、袁術は一つ、対価を求めました」
くくっと息を漏らしたのは劉表。何を対価に、というのを彼女は知っていた。泥沼の政略戦争を生き抜いてきた龍は、袁家のやり口を誰よりも知っている。
「我が妹の身を差し出せ、と。そう言われたのでございます」
すっと目が細められた。重圧で息がし辛くなった。帝が目を細めただけで空気が凍る。
悲劇の物語、傍目にはそう聞こえるモノだ。劉協に姉が居た事も相まって、心情を擽るに足りる。
されども、政略で誰かの身柄を引き渡すのは世の常。その程度看過出来ずして、王には成り得ない。
「黄巾、連合はまだ義がありました……しかし先の劉州牧の領地に袁術に指示されるまま攻め入った所以は其処にあります。我が妹の身可愛さに、“私が反旗を翻す時機を遅らせました”」
当主としてではなく姉として、個人の感情の為に戦を行ったと、雪蓮は示した。そうする事で、孫呉全てから自分を切り離し、責を受けるのは自分自身だけだと皆に表した。
――家の繁栄の為に我が身を切る、か。孫策はやはり王の理を理解している。
心の内だけで、華琳は褒めた。自身にはそういった相手はいないが、後継者が必ず願いを繋ぐならそうすべきだと彼女も分かっている。
それは確かに上手い一手だ。孫呉の未来は守られる、極上の一手であろう。華琳が指先一つに罰の有無と大きさを断じてしまえば事が終わり、広い対応が開けるモノである。
さらに言えば、これだけで雪蓮が終わるはずも無い。
雪蓮と冥琳は、劉表が華琳の元に謝罪に行った事を知っている。華琳が敢えて情報を流したから、その手札を大いに使える。
責任者の身一つで贖えぬ責であるのか否か、お前はそれを先に決めてしまった。そうであろう、曹孟徳……そう、言っている。
もう一つある。雪蓮は……華琳の首元に刃を突き付けたのだ。断じた瞬間
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