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ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その弐
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一撃屋には向かない相手だ。先程のディアベルのようにワンコンボでHPをすべて喰いつくされることも十二分に有り得る。

 そしてなによりも最悪なのがあのソードスキルだ。知りもしないソードスキルに対応するのは基本後出しだけ。しかしこのイルファングの扱うソードスキルは発動から攻撃が異様に早い。間合いギリギリでやっと防御のチャンスがあるといった程度のスピードだ。

 よって俺とイルファングの決闘は間合いの読み合いとなる。俺の負けない戦法はイルファングのミス待ち、イルファングの勝ち筋は俺の読み違い、危険な上、俺が勝てることはまずない。それでも俺が戦う理由は、これ以上死者を出さないため、次戦の情報収集のため、そしてなによりも俺が俺たる欲求のためだ。

 十メートルほどの距離にまで近づいた俺は意識を集中しイルファングに全神経を(そそ)ぐ。するとシステムにアシストされイルファングの詳細情報(ディテイル)を描写し、反比例の法則に従ってなのか周囲の風景がぼやけていく。指先を動かしフェイントで俺を誘うイルファングは、唐突に両手で握っていたカタナをから左を離し、左の腰溜めに構えんとした。もしあれが何かしらの予備動作ならこの距離でも発動するソードスキルということなのだが、そうなると遠距離移動技(ブリンク)だろう。いや、もしくは……。

 俺は力を抜いて小さく跳んだ。数センチ浮いた体は敵攻撃の衝撃をモロに受けるが、鍔迫り合いと比べると幾分かダメージは抑えられ、衝撃によるノックバックによって後方へと撤退できる筈だ。撤退、とはいっても着地に成功しなければ追撃を受けてしまうので撤退には着地の成功が必須条件なのだが、その点の対策は既に打ってある。

 跳躍直後、イルファングのカタナが緑に輝き、音速を思わせる速度で斬り払われた。移動はしないようだが代わりに空間が歪み、ソードスキルのライトエフェクトが衝撃波として飛翔してきた。ブォンという空気を裂く爆音と供に緑の光が俺の体に吸い込まれる。 

「ぐぅおッ……ルァ!!」

 俺は自身の喉から出た悲鳴を聞きながら空で身を捻じり、直撃を免れようとする。体の正中線に狙われたその衝撃波は、幸運にもクリティカルヒットだけは避けれた。しかし予想通り後方へと大きくノックバックする。衝撃と同時に破裂するような音が俺の体から鳴り、気持ち悪い浮遊感がやってくる。吹き飛ばされながら≪四つ目のスキル≫を発動し、空中で一回転しながら両足で華麗に着地。ボス専用のために突っこんだ四つ目のソードスキル、≪軽業(アクロバティック)スキル≫。使う機会が有ったのは良かったが、有効だったかどうかはわからない。

 先の戦闘で俺は十メートルほど吹き飛び五、六パーセントのHPを失い、代償として一つのソードスキルを見物できた。しかし見物できても対策ができたという
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