暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その弐
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音のないサイレント映画の中、思いついたように、感慨もなく、静かに冷静に、直感的に≪間に合わない≫ことを理解した。

 俺の目の前で、両手斧使いエギル以下の数名が援護に動こうとゆっくり足を踏み出した。彼らを高速で通り過ぎ、イルファングのターゲットに入ろうとするが、やはり間に合わなかった。

「ウグルオッ!!」

 獣人の咆哮と供に両手に握られた奴のカタナが、床すれすれの軌道から正面に倒れ伏していたディアベルを高々と斬り上げた。薄赤い光の円弧に引っかけられたかのように銀色の金属鎧に包まれた体が軽々と浮かび上がり、イルファングのカタナが不気味に(くれない)に光る。

 上、下の二連撃。一拍おいて、強烈な突き技。俺の知らない、三連撃のソードスキル技だ。空中に浮かばされたディアベルのダメージエフェクトは俺の慣れ親しんだ強烈な赤色、≪クリティカルヒット≫の真紅色、そのものだった。

 ディアベルは瞬く間に三連撃を受け、走る俺の頭上を通り越す勢いで大きく吹き飛んだ。後方で嫌にリアリティ溢れ、重みのある落下音がドスンと聞こえたその数秒後。

 青色のガラス片のようなポリゴン――もとい、死を連想させる、おぞましいガラスの破砕音を大きく鳴らした。間違いようもなく、レイドリーダー、ディアベルが死んだ。

 状況が不利になっても、誰かが死んでも、架空世界の法則は決して乱れず時が止まるようなことはない。

 第一目標を完膚なきまでに倒したイルファングはスタンが解けた五人をまるで品定めするように、獰猛に笑いながらジロジロと眼球を動かした。そして五人を見終わったのち、六人目に俺を見た。イルファングは戦場に突撃してくる俺に視線を集中し、嘲笑するように顔を歪めた。『おいおい、一人で来るのか? この死にたがりめ』イルファングの方角から、そんな幻聴が聞こえた気すらした。

 イルファングの挑発には乗らず、最後の保険としてすぐ近くにいる筈のエギルに対しほぼ絶叫するように言葉を投げかける。

「エギル! 後は任せた! お前のしたいようにしな! 俺は時間稼ぎ(したいこと)をする!」
「ちょ、ちょっと待てあんたッ!」

 エギルの言葉を意識からフェードアウトさせ、逃げ惑う崩壊したC隊の面々とすれ違いつつ、間合いを探りながら一歩一歩確実に近づく。周囲から人の気配が消え俺とボスが孤立した状態になっていることを俺に推理させた。これが俺の望んでいたタイマンだ。正直、背骨が凍り付くほど恐ろしい。

 敵は未知の存在だ。おそらく数値的なHPや筋力俊敏は情報通りだろうが、あの日本刀がその情報をぐちゃぐちゃに混ぜ込み、もう信用できないほどに≪アルゴ≫のブランドを壊した。情報はなく、戦闘力は敵の方が圧倒的に上、しかも戦いながら急速に学習していく。俺のような一発屋ならぬ
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