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クルスニク・オーケストラ
第三楽章 泣いた白鬼
3-3小節
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《待てよ。本当の王様とは限らないぞ》」

 あ、こら! 許可なしに人の口を使うんじゃありません!

「えー。ジゼル、うたぐり深いー」
「《王様のクセによそんちの場末の町をウロチョロしてんだ。疑うのがマトモな感性だろ》」
「信じる信じないは自由だ。それに、今の俺は、ローエンの言うように市井に紛れて行動している。王として扱われずとも構わん」
「《おー、心広い。んじゃお言葉に甘えて。ヨロシク、アーストさん》」
「それでいい」
「――意外と子供っぽい拘りがあるのですよ」
「何か言ったか」
「いえいえ」

 ほっ。よかった。誰も変だと気づいてらっしゃらない。

 薬を増やしたせいかしら。最近は体のコントロールをこうして奪われることが多い。かといってこれ以上薬の量は減らせないとリドウ先生もおっしゃったし……
 わたくしの気の持ちようでどうにかするしかありませんわね。


「――ジュード」
「分かってる。落ち込んでる暇があるなら、源霊匣を完成させる努力をするよ」
「それでいい」

 Dr.マティスは決然と肯かれました。……たった16歳の少年がその双肩に背負った世界は、どんな重さでしょう。

「そういう訳で、お供させていただいてよろしいでしょうか?」
「構わないよ」

 ルドガー君、相手はVIPなのですから、失礼のないようにね。

「では改めて。ローエン・J・イルベルトです。以後お見知りおきを」

 ローエン閣下がルドガー君に手をお出しになる。ルドガー君は応えて握手した。
 ローエン閣下はわたくしにも手を差し出されたので、わたくしも握手させていただいた。
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