第三楽章 泣いた白鬼
3-2小節
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ランドも。
「どうした? ずいぶん顔色が悪いが」
どうやら少し前の時間軸の分史に飛ばされたようね。
Dr.マティスは背後から忍び寄った男を、逆に武術で押さえつけた。分からないなりに最善の行動を取った。
「あなたたちやアルクノアが、僕を憎む気持ちは分かります。でも源霊匣は信じてください! あと一歩で実用化できるんです!」
「手加減するな。どうせリーゼ・マクシア人だ」
ああ。絶望的に会話が噛み合ってませんわね。頭の痛いこと。一刻も早く時歪の因子を探しに行って、こんな世界とはおさらばしたいものですわ。
「では、こちらも遠慮なく」
え?
突然のことだった。上空から3本のナイフが降って来て、ブラートを囲んで地面に突き立った。
その途端に、薄い緑の魔法陣が地面に光り輝いた。ブラートはそれで動きを封じられたようだった。
これが精霊術……知識として「観た」ことがあっても、ナマは初めてですわ。
「ローエンっ!」
Dr.マティスが歓声を上げた。
ローエン……まさか、リーゼ・マクシア宰相のローエン・J・イルベルト閣下?
分史世界とはいえ何故、リーゼ・マクシアの宰相閣下が、エレンピオスの、こんな寂れた町の路地裏などにいらして……
――ミス・ジョウが流してくださった情報。路地裏の、魔人。
「だれ?」
「一緒に旅をした仲間なんだ」
「何でも知ってる、頼りになる人だよ」
「《カナンの地》がどこにあるかも?」
「カナンの地、ですか」
「何でもお願いを叶えてくれる、ふしぎな場所!」
……ああ、何とも羨ましゅうございますわ、エルちゃん。誰に吹き込まれたか存じませんが、《カナンの地》にまつわる闇をご存じないなんて。
「ふん。そんな場所があるなら願いたいもんだ。リーゼ・マクシア人を皆殺しにしてくれってな!」
拘束されているのに吠えますこと。《消してや》ったりはしません。無駄な殺生はキライです。
「素手でこんな真似できる奴らを、同じ人間だと思えるか!」
まさにリーゼ・マクシア人のDr.マティスとレイア様が悲しげに顔を伏せられました。
ブラートの意見は、現代のエレンピオス人にとっては正論です。幼い頃は、わたくしも、わたくしの家族もそう言っておりました。
ですが、わたくしは知りました。この身に刻んだ《レコード》には、霊力野を持っていたエレンピオス人もいらしたのです。霊力野があるからといって必ずしも人外ではなかったのです。これが時代の移ろいですか。
「同感です」
ローエン閣下が拘束陣に手をかざされた直後、陣の中が燃え上がり、ブラートの者たちが焼き尽くされた。
「ひっ…」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ