第一楽章 嵐の後の静けさ
1-1小節
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なりの配慮だろう。こういう濃やかさに救われたことは何度かあったな。
しばらく行って、ジゼルが言ったバーらしき店の入口前に着いた。
ジゼルはGHSを出した。誰かにメールしているようだった。メールの返信が返ってから、ジゼルは俺を促した。
いや、肩はもういい。時間はあったからもう自力で歩ける。
そう告げると、ジゼルは安堵を浮かべた。
二人でバーに踏み込む。カウンター席にいた先客を認めるや、「げえ」と言いたくなった。
よりによってその先客が、俺の腐れ縁の天敵、リドウ・ゼク・ルギエヴィートだったからだ。
「よう。すっかりイイ格好じゃないか、ユリウス。男前度が上がったぜ?」
無視しろ、無視。自分に言い聞かせて適当なボックス席にどかっと座った。
「リドウ先生。ご自身もあまり人のことはおっしゃれないのではありませんの?」
「俺はマイナスよりデカいプラスポイントがあるからいーの」
何だそりゃ。いやいい、言うな。どうせ俺にとってはろくでもないことに決まってる。
「んじゃユリウス、上脱げ」
「はあ?」
「どうせその下ボロボロなんだろ。治療してやるから脱げって言ってんだよ」
「要らん。余計なお世話だ」
「俺の職業言ってみ」
「分史対策室副室長」
「残念。お前の失脚のおかげで明日から室長でーす」
こいつ、ムカつく。
「じゃなくて、表の」
「……医者。ないし、医療部署トップのドクターエージェント」
「医者が目の前で死にかけてる患者発見して大人しく死なせてやると思う?」
「思わない……」
こいつムカつく…!!
ええい。こうなったらもうさっさとすませて、リドウが優位に立つ状況を終わらせてやる。そのためにも。
「おー。豪快な脱ぎっぷり。さすがクラウンはそこらの男とやることが違うね〜」
「頼むからお前息するな」
隣のボックスでこっちに背を向けて座るジゼルが、隠しもしないで笑った。
「手当てが終わりましたら反省会をいたしましょう。《わたくしたち》のこれからの大事なお話を」
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