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Magic flare(マジック・フレア)
第5話 僕タチハ死ンデシマッタ
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ちが困って集まって来てるのに、どうしてこんな時に誰一人来ないのよ……バカ教師ども! あんなに高いポイントもらっておいて!」
「まあまあ池上さん。怒ったって仕方がありませんよ」
「そうは言いますけどね、あなた、教職員であることがどれほど幸福指数に影響しているかご存知?」
 女は右手の指で左腕をこつこつ叩きながら言った。
「こっちはね、子供をいい学校に入れるためにそりゃもう努力しているじゃない。高校受験の時の子供たちはみんなキッズランクだからね、そうなると親の幸福指数を見られるわけでしょ。一生懸命ポイントにいいとされるねえ、習い事して、いいものを買って、ボランティアに顔を出して、あなた達もそうでしょ!」
 一際声を荒らげ、
「お金をね! 社会に吐き出し続けてきたわけじゃない! 子供たちのために! 幸福指数が上がるから! なのにねえ、教員であるってだけで楽して良いランクを手に入れた連中がどうして! こんな時に何もしないのよ!」
「したくても、出来ないのかもしれません」
 クグチは冷たい声で制した。
「先生方も死に絶えてしまったのかもしれませんよ」
 向かいの少女が動揺して声を漏らし、顔を引きつらせた。
「なんてことを言うんだ君は!」
 中年男が睨みつけてきた。
「ところで君は何なんだ? 学校関係者には見えないが?」
「ACJの者です。『幽霊狩り』ですよ」
 降り注ぐ視線に軽侮が混じる。クグチは付け加えた。
「人を探しているんです。ハツセリという名の少女です。高校生くらいの、髪の長い女の子です。知りませんか」
 生徒たちは顔を見あわせ、無言で首を横に振った。
「あるいは、桑島メイミという名を名乗っていたかもしれない」
「……わかりません。すみません」
 生徒の一人が呟き、わかっていた答えだが、それでも落胆した。
 ハツセリという名は何だろう。あの少女、つまり肉体の持ち主の名前だろうか。それとも死んだ桑島メイミの守護天使の名だろうか。
 もしも守護天使が本当に、自分を死んだ持ち主自身だと思っていたならば、「ハツセリ」ではなく「桑島メイミ」と名乗っていたはずだ。
 ハツセリを名乗る存在は、桑島メイミの記憶と人格を引き継ぎながら、その名を語らなかった。彼女は桑島メイミの不在を誰よりよく知っていたのだ。けれど通常の廃電磁体=幽霊と定義される存在に当てはめるにも、彼女は異質すぎる。何と言っても、肉体があるのだから。
 ハツセリも、廃電磁体も、いずれ必ず廃電磁体となることを宿命づけられた守護天使たちも、それに振り回される人々も、そこから弾き出された自分のような人々も、なんと悲しい存在だろう。
「あの」
 ルネが上ずった声で呼んだ。
「僕、お父さんを探してきます。迎えに来てるかもしれないから」
 クグチが頷くと、ルネは一礼し
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