第1部 ゼロの使い魔
第9章 破壊の剣
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翌朝……。
トリステイン魔法学院では、昨晩からの蜂の巣を突いた騒ぎが続いていた。
何せ、秘宝の『破壊の剣』が盗まれたのである。
それも、巨大なゴーレムが、壁を破壊するといった大胆な方法で。
宝物庫には、学院中の教師が集まり、壁に空いた大きな穴を見て、口をあんぐりとあけていた。
壁には、『土くれ』のフーケの犯行声明が刻まれている。
『破壊の剣、確かに領収しました。土くれのフーケ』
教師たちは、口々に好き勝手なことを喚いている。
「土くれのフーケ!貴族たちの財宝を荒らしまくっているという盗賊か!魔法学院にまで手を出しおって!随分と舐められたものじゃないか!」
「衛兵はいったい何をしていたんだね?」
「衛兵などあてにならん!所詮は平民ではないか!それより当直の貴族は誰だったんだね!」
ミセス・シュヴルーズは震え上がった。
昨晩の当直は、彼女だった。
まさか、魔法学院を襲う盗賊がいるなどとは夢にも思わずに、当直をサボり、ぐうぐう自室で寝ていたのであった。
本来なら夜通し門の詰め所に待機していなければならないのに。
「ミセス・シュヴルーズ!当直はあなたなのではありませんか!」
教師の1人が、さっそくミセス・シュヴルーズを追及し始めた。
オスマンが来る前に責任の所在を明らかにしておこうというのだろう。
ミセス・シュヴルーズはボロボロと泣き出してしまった。
「も、申し訳ありません」
「泣いたって、お宝は戻ってはこないのですぞ!それともあなた、『破壊の剣』を弁償できるのですかな!」
「わたくし、家を建てたばかりで……」
ミセス・シュヴルーズは、よよよと床に崩れ落ちた。
そこにオスマンが現れた。
「これこれ。女性を苛めるものではない」
ミセス・シュヴルーズを問い詰めていた教師が、オスマンに訴える。
「しかしですな!オールド・オスマン!ミセス・シュヴルーズは当直なのに、ぐうぐう自室で寝ていたのですぞ!責任は彼女にあります!」
オスマンは長い口髭をこすりながら、口から唾を飛ばして興奮するその教師を見つめた。
「ミスタ……なんだっけ?」
「ギトーです!お忘れですか!」
「そうそう。ギトー君。そんな名前じゃったな。君は怒りっぽくていかん。さて、この中でまともに当直をしたことのある教師は何人おられるのかな?」
オスマンは辺りを見回した。
教師たちはお互い、顔を見合わせると、恥ずかしそうに顔を伏せた。
名乗り出るものはいなかった。
「さて、これが現実じゃ。責任があるとするなら、我々全員じゃ、この中の誰もが……、もちろん私を含めてじゃが……、まさかこの魔法学院が賊に襲われるなど、夢にも思っ
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