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連邦の朝
番外編B 公爵と翼持つ者
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空を飛び、人を見下ろすのが当たり前と思われていた翼人は、地に叩き落とされ縄により縛られていた。

縛られている翼人は、若い個体の様で切り傷等が有ったが、エスターシュとヴィヴィアンが治療していた。

捕まえられ縄に縛られた翼人は、目を覚ますと自分が捕まっているのが、信じられないといったような顔をしていた。

「起きたかな?君の名前と役割を教えてくれたまえよ。」
威圧的で、亜人の敏感な魔力察知を利用した、魔力を散らしながら脅すように笑顔で尋問を始めた。

「貴様らに、名乗る名も無ければ、話す気もない。」
翼人の娘は、そう宣言すると沈黙を貫こうとした。

が、悲しいかなそんな事は、宮廷の闇を歩いてきたエスターシュには、児戯に等しく通用しなかった。

「どうした。声が震えているぞ?何も私は君らに、危害を加えようとしている訳ではないのだよ。」
エスターシュの優しげな声と目の奥が笑っていない冷めた目付きに、翼人の娘は、気圧され萎縮した。

ヴィヴィアンは、これは、勅命の任務と自分に言い聞かせていた。

亜人だからと言う、恐怖と劣等感をヴィヴィアンは、持てなかったのである。

このエスターシュ本人に、その気は、無いだろうが、時に皮肉めいた言い方やエスターシュ自身が、自ら劣っていると言うわれた部下は、どうすれば、良いのだろうか?

その時の苦い自分と重ねて見えていたのだった。

それに、この翼人は、強そうに見えず、若い個体だったからかも知れない。

哀れみを含んだ視線をぶつけるヴィヴィアンと圧力をかけるエスターシュ、これらの関係はまさに、吸血鬼姉妹を説得した状況に、似ていた。

「うん、取り敢えず夜営の準備をするか。」
そう言うとエスターシュは、翼人を木に吊るして、ワイアットが考案してアカデミーが研究開発した穴堀の魔法を使い洞窟を作り、錬金で壁を固めて、ヴィヴィアンと固定化の魔法を使い丈夫な拠点を作った。

「そこそこ、上等だなヴィー。私は、この乱暴者と残るから、荷物を置いて、麓の村で物を買い付けて来い。」
エスターシュは、腰に付けていた金貨をヴィヴィアンに渡した。

「わかりました。お父様。」
ヴィヴィアンは、エスターシュの護衛から離れて良いものかと考えたが、道中トロール鬼も現れなかったので、大丈夫かと結論を出した。

「お母様、私達も一緒に行きます。」
「行きます。」
姉妹も一緒に行くと言った。

「父上と一緒に誰か居なければ、駄目だろ。」
ヴィヴィアンは、名目上の役目である護衛の観点から、エスターシュと翼人を二人きりする訳にも、かといって彼女らを突き放す訳にもいかずに、ただ優しく母親が言い聞かせる様に、言い聞かせる事ぐらいしか出来なかった。
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