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神話伝承相続権 その2
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昨日の飲み会から一夜が明けた翌日、武智は台所に立っていた。
朝ごはん、ああ朝ごはん、朝ごはん。
とっても作るのが面倒でパンで済ませたいのだが、最近は健康に気を使って和食を作ったりしている。安いアパートの一人暮らしでは、こういう時に母親の有り難さを思い出す。母さんって苦労してたんだなぁ。
現在も味噌汁を作るために豆腐切ったりネギ切ったり……してるのだが、どうもそれほど包丁使いが良くないせいか上手く切れない。……包丁が百均の安物であることが原因かもしれないが。
「こんな事なら自立する前に母さんに料理習っとけばよかった」
もう長い事実家に帰っていないが、年末年始くらいは連絡を取っている。帰って様子を見たい気持ちもあるが、学業に集中である。
しかも伝承者となった今、親に変な迷惑かけるのも嫌なので帰る気はさらさらないのだが。
というよりもこの先生きのこれるのかの方が気にしなければいけない話題だ。まだ敵対心を持つ伝承者とは出くわしていないが、遅かれ早かれ会う事になるだろう。
「戦いかぁ。まだ本格的にはしたことねぇなぁ………って痛ッ!」
ぼーっとしながら刃物を振るった報いというか、指先を包丁で切ってしまったらしい。地味にひりひりとした痛みが襲う。
「いっつぅ〜〜……うっかりだなぁ。血が野菜にかかっちゃったよ……」
『うー、すまなんだ父上』
「ああ気にしない気にしない。おれっちがミスっただけだし」
野菜を流し台の水で流しながら子供の声にそう返事をして――ん?
……おれっち、一人暮らしなんだけど。同居人とかいないんだけど?
「今返事したの……誰だ?」
『そう意地の悪い事を言わないでくれ父上!目の前におるではないか!』
「え?目の前?」
なんのこったと思って目の前を見てみると――包丁の上になんかいる。
こ、小人だろうか?なんとも可愛らしいくりくりした瞳でこちらを見上げている三刀身くらいの小人がそこにいた。大きさは握り拳より少し大きいほどだろうか。こちらに向かって短い手をぶんぶん振って存在をアピールしている。
「えっと………その。おれっち、疲れてんのかなぁ?はは、ははははは」
それか夢でも見てるのかと思い頬を抓ろうとしたら指が血まみれで無理でした。というか、意外と傷が深い。当の小人はさっきより更に必死に存在をアピールし始めた。
『何をおっしゃる父上。ソレガシはたった今、父上の手によって生を受けたばかり!産まれ立てピチピチの神でありますぞ!!』
「あっこれもうヤバいわ末期だ病院いこう」
これはきっとおれっちの弱い心が生み出した幻なのだろう。結構可愛いからちょっと甘やかしてみたいけど、夢は醒めるものだ。おれっちはどうやら現実逃避の果てに幻覚と会話を始めたらしい。
『違います
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