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FAIRY TAIL 星と影と……(凍結)
幽鬼の支配者編
EP.28 聖十大魔道の力
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が……その彼に、もっと後ろへと突き飛ばされた。

「ワタ、ル……?」

 一瞬が何倍にも引き伸ばされた時間の中、ジョゼの膨大な魔力の光が影を作ってよく見えないが……エルザには彼が笑っているように見えた。

「(私を助けるために? 私だけでも、って……?)」

 亡霊の叫びに飲み込まれようとしている彼の名を、エルザは絶叫した。



    =  =  =



 マカロフのいない今、ワタルとエルザは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の柱的存在だ。
 旗印の片割れである彼を屠れば、未だ抵抗を続ける妖精たちはどんな絶望に暮れるだろうか。
 そして、間に合わない、届かないと知りながらも必死に手を伸ばして彼の名前を叫んでいる他方の片割れ――エルザは彼の屍を前にどんなふうに嘆くのだろうか。

 自分の力がワタルを殺し、エルザが絶望に泣き叫び、家と旗頭を一挙に失った妖精の尻尾(フェアリーテイル)が地に落ちる――――それを想像するだけで、勃起するほどに興奮と射精時にも似た快感がジョゼの全身を駆け抜けた。
 しかし……



「洒落臭ぇ!!」



 ジョゼが戦意喪失していたと思い込んでいたワタルを飲み込まんばかりに迫っていた魔力は、彼の威勢のいい叫びと共に振るわれた腕とまばゆい光とともに霧散した。

「は……?」

 より強い魔力で力任せに押し潰したのではない……ジョゼの魔法を根本から消滅させたのだ。
 『魔』を断つ『魔』――――その存在は海千山千のジョゼといえど予想外だったのか、太陽を直視してしまったかのように腕で顔を庇って目を細めながらも、呆然と驚愕を零した。

「ワタル! でもなんて事を……そんな状態でそんなもの使ったら……!」

 突き飛ばされたエルザは起き上がりながらも、彼の無事に喜色と安堵を浮かべて顔を緩ませたが、すぐに焦りの表情を浮かべた。

 エルザの知るそれ(・・)は魔力の消費が激しいなんてものではない。
 土壇場で“合体魔法”を使っての魔導集束砲からの防御、暴走するミラジェーンの“悪魔の魂(サタンソウル)”との激闘と鎮静化――――どれも、彼の魔力を大きく消耗させたのは疑いも無い。
 そんな状態でそれ(・・)を使えば、そう長くない時間で残る魔力を全て一気に使い切ってしまい、命に関わるほど重大な急性魔力欠乏症に陥ってしまう事は目に見えていた。



 それでも、ワタルはそれ(・・)を使った。



 ジョゼの魔法発動のラグはゼロに近い。よって感知はほとんど役に立たない。
 それに己の最も信頼できる武器、“魂威”も通用しない。


 自分の二つの武器がジョゼにはまったく通用しない――――だからどうした。

「今は退くべき時じゃねェだろうが」
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