幽鬼の支配者編
EP.28 聖十大魔道の力
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く立てている、カタカタという消え入りそうな金属音が、彼が理解した事への震撼を如実に表現している。
その原因には、もちろん先程の事もあるが……別のものへの戦慄も含まれていた。
通常、この世界の魔法は魔導士の体内の魔力の素である微粒子――エーテルナノの活性化によって発動される。
ワタルはその特異的な体質から、エーテルナノの活性反応を感知する事ができ、それによって先読みを可能とするのだが……今回はそれが無かった。
いや、まったくのゼロという訳では無い。
活性化から発動までが、普通ならあり得ないほどに短かったのだ。
ある程度の修練と習熟によってラグを短くすることはもちろん可能だが、それを反応できないまでに短くされた魔法は、優秀な魔導士が多く集まる聖十の試験でも見たことが無かった。
「(同じ聖十の“岩鉄”のジュラさんよりも短縮化されたラグ……これが、マスターと同じ力量を持つとされたマスター・ジョゼの力か)」
自分はもちろん、蛇姫の鱗の聖十大魔道、ジュラ・ネェキスでさえも比べ物にならないほど洗練された魔法と、膨大な魔力。
高い感受性を持つワタルには、決して動かず、ただそこに悠然とたたずむ山が敵意をもって自分を見下ろしているかのように思えた。
敵の力量と技術は自分とは比べ物にならない。それこそ雲の上の存在に挑むようなものだ。
ならば…………敵わないと諦めるのか?
「そりゃ有り得ねえだろ……!」
後ろには帰りたい場所がある。隣には『力になりたい』と言ってくれた愛しい女がいる。
そして、それらを脅かす敵が目の前で嗤っている。
『ならば、ここで退くのは有りえない』
そう決意すると、ワタルは目を閉じ集中し始めた。
「有り得ない、ですか。まあ、余りの力の差にそう言いたくなる気持ちも分かりますが……駄目ですよ、認めなくちゃ」
これが現実です。
漏らした言葉と彼の瞑目を諦念と捉えたのか、歓喜の笑みを強くしてジョゼはそう言った。
ルーシィの拉致失敗に始まり、魔導集束砲“ジュピター”の防御、“煉獄砕破”の阻止――――計画の要所要所を悉く妨害してきたワタルが膝をつき、怖気ついている……ジョゼにはこの上なく快感だった。
痛快そうに嗤うと、ジョゼは再び手に魔力を溜め始めた。
「これが聖十の魔導士――――貴様等など足元にも及ばない、住んでいる世界すら違う魔導士の力だ! 己の無力を嘆きながら、絶望のうちに死ぬがいい!!」
そして解き放つ。
「ワタル、退け……え?」
迫りくる、人を殺して余りあるほどの魔力に対し、エルザはワタルの前に出て“金剛の鎧”に換装、防御しようとした
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