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机に叱られて
第一章
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第一章

                      机に叱られて
 坂下莉奈は悩んでいた。その白い細面で丸く大きな目を持っているその顔を思いきり憂させていた。
 その白さがかなりのものだった。透き通る程である。眉は極めて細く流麗なカーブを描いている。顔だけみればかなりのものである。
 しかも細めのスタイルで脚と腰の辺りがかなりいい。その彼女がクラスの自分の席に座ってあれこれと悩んで考えていたのである。
「どうしようかしら」
 不意にこんな言葉を出した。
「どうにもこうにも。言おうか言わまいか」
 今度はこんな言葉を出すのであった。
「それが問題ね」
 ハムレットの言葉である。とりあえず迷ってもいるのもわかる。その迷いの中で無意識のうちにその机の上にあれこれと落書きをしていた。
「ええと、ここがこうなって」
 何か絵を描きだしている。まずは自分の自画像を描いていた。
 それは女の子らしい可愛らしい絵であった。それを描いてから今度は格好いい男の子の絵を描きだす。精悍な顔立ちをしていて目が鋭い感じである。
「雄亮君とこうなって」
「あのね」
 こうして絵を描いているとだった。不意に何処かからか声がしてきた。
「悩むのはいいけれど」
「あれっ!?」
 莉奈の方もその声に気付いた。それでふと周りを見回した。
「誰かいるの?」
「いるよ」
 するとまた声が聞こえてきたのだった。
「いるから言ってるんだけれど」
「けれど誰も」
 今クラスには誰もいなかった。いるのは自分だけだ。放課後で誰も残っていない。それで彼女もあれこれと一人考え込んでいたのである。
 しかし何処からか声がしてきた。彼女もそれにまずは首を傾げさせた。
「お化け?それとも」
「お化けっていったらお化けよね」
 するとこう返事が返ってきたのだった。
「はっきり言ったら」
「お化けって」
「私よ、私」
 また声がしてきた。
「私よ」
「私って」
「ほら、私」
 ここで机が動いた。自然とだった。
 がたがたと揺れてそのうえで彼女に声をかけてきたのだ。そうしてであった。
「わかったわね」
「って机が喋った!?」
「だからお化けだって言ったでしょ」
 間違いなかった。机の方からの言葉だった。これには莉奈も驚いてしまった。
「嘘みたい・・・・・・」
「嘘で机が喋るかしら」
「それは」
 その筈がなかった。間違いなく喋っている。否定できなかった。
「そんな筈がないし」
「わかったわね、じゃあいいかしら」
「いいかしらって」
「まずは落書きを消しなさい」
 机は今度はこう言ってきたのだった。
「いいわね、それは」
「落書きをって」
「あんた自分の顔に落書きされて楽しい?」
 机は莉奈に対して問うてきた。

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