暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた
第三話
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いるなのはには殆ど視認出来ない。ただ、パパパパン!という、拳と触手がぶつかり合う音だけが、夜の街に響く。

「レイジングハート・・・。どうすればいい?」

『砲撃モードで倒すのが一番かと。出来ます、貴方なら。』

 そこまで凄い戦闘を行っていながら、黒い男の攻撃は思念体にとって驚異ではないという。ならば・・・

(あの人の戦いを無駄にしない為にも、私が倒さなきゃ!)

 元々責任感の強い少女だ。一人にだけ任せている訳にもいかないと、気合を入れる。杖状だったレイジングハートが、主人の願いに答える為に自身の形状を変化させ始めた。
 それは、杖というより、既に槍と言ったほうが正しいだろう。

『ディバインバスター、セットアップ』

(この子、砲撃型・・・!?)

 あまりに強い魔力の波動。チャージされていく魔力の多さにユーノは驚きを隠せない。魔法という存在を、つい先ほど知ったとは思えないほどの順応能力。あまりに高すぎる魔法への適正。管理局員でも撃てる者が少ないと言われる砲撃魔法を、これほど簡単に発動出来る初心者など、そうそういるわけがない。

「あの人に当てないように、気を付けないと!」

『了解しましたマスター。』

 なのはが準備するディバインバスターに気がついた思念体は、そのあまりの魔力量に驚き、一目散に逃げ出そうとした。

 ―――しかし

「そうはさせるかよ!」

 そんなことを許すはずがない。ダメージがなかろうが、足止めならば十分に出来る黒い男が、飛び上がった思念体の更に上空へとジャンプする。

「喰らいやがれ!」

 打ち下ろされる、隕石のような一撃。渾身のパンチを受けた思念体は、上空から一直線に地面へと叩きつけられた。地面が大きく破壊され、クレーターが出来る。それが、どれだけの威力を持っているのかの証明であった。

「今だ!」

「行くよ!ディバイーン・バスターーーーーーー!!!」

 ゴッ・・・!

 瞬時に思念体へと到達した、桜色の魔力の本流。それは、周囲の壁すらも余波で溶かし、あっというまに思念体を取り込んだ。思念体の声にならない悲鳴が響く。

「ジュエルシード、封印!!!」

『ジュエルシード封印』

 破壊跡に残ったのは、小さな宝石だった。それが、この事件の元凶である、ジュエルシードである。レイジングハートはジュエルシードを、自らのストレージへと取り込む。

「・・・ふぅ・・・・・・。」

 全てが終わり、緊張から解かれたなのはが、バリアジャケットを解除しながら嘆息した。そして、怪我の一つも負わずに帰ってきた黒い男へと頭を下げる。

「あの、ありがとうございました。」

「いやいい。こちらこそ、助けが遅くなって悪かった。」


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