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101番目の舶ィ語
第三話『今日は電話に出て下さいね』
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装巫女からのメールや着信も似たようなものだった。
……元気かな、白雪。
アリア達と上手くやってるかな。女子に襲いかかったりしてないよな?
まあ、白雪の事は置いておこう。
問題なのは『非通知』で送られてきたのにも関わらず、電話に出なかった事を彼女が知っていた事だ。
あの電話の主が一之江だとしたら……?と考えるのは飛躍し過ぎだろうか?
謎の着信、謎の転校生、謎の言葉……。

「はふぅ」

昨日から何だか厄介な事に巻き込まれているな。
憑依してから、いや、あの携帯を手に入れてからおかしい事に巻き込まれている。

「難しい顔してるね」

「まぁ、なぁ……」

「モンジ君に昨日の続き、『8番目のセカイ』の事を聞こうと思ったんだけど。今日はやめといた方がいいかもね」

「……なんか、悪いな。恩に着るぜ、キリカ」

「いいっていいって。何かわかったら教えてね」

キリカは笑顔のままパタパタと手を振ってくれた。

よくできた子だな。なんだか望月萌にも似てるかもな。
などと感心してしまった。

そして、そんな俺達のやり取りや様子をじっと観察している視線があった。

「……」

一之江瑞江の鋭い視線は、俺達の一挙一動を逃さないようにしているかのようだった。






2010年5月11日。午前9時20分。


「これらの公式を当てはめれば、この問題は簡単に解くことが出来……」

担任の安藤先生のよく通る、涼やかな声が午前の教室に響いていた。
授業中だが俺は全くといっていい程に集中できないでいた。
原因は俺の背後から感じる圧迫感のせいだ。

「……」

無言のプレッシャー。
かつてレキからも感じた事がある圧迫感が俺の背中越しに背後から感じる。
おそらく背後の少女。一之江瑞江は俺の背中を見つめている。
その視線に物理的な感触を当てはめるとしたら、正にチクチクと刺すような痛みだ。

「……なあ、一之江……さんや」

耐えかねた俺は、意を決して背後の少女に話しかけた。

「はい」

その声は朝聞いた怖い声よりも幾分か柔らかくなったものの、それでもトゲトゲしい鋭さを感じた。
他のクラスメイトにはもっと穏やかに話しかけていたのを知っている分、転入生にいきなりそんな態度を取られるとやりにくい。
親密になりたくもないが訳もなく睨まれるのも気分が悪い。
やっぱり聞いてみるか。

「朝の言葉はどういう意味だったんだ?」

「……」

極力私語がバレないように小声で語りかけるものの、それに対する返事は皆無だった。
非常に気まずい沈黙が俺と彼女の間に流れる。
気まずい。女子になんて声をかければいいんだ?
こう言った時の対処法をジャンヌに聞いとくんだったぜ。
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