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IS 〈インフィニット・ストラトス〉〜可能性の翼〜
第三章『更識簪』
第三十八話『本日は休息日和・駅前編』
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ま硬直。さらに俺の顔と財布を二度見した。
そして……

――ばしん

「……っ」
まるで分捕るようにして受け取ると、まじまじと財布を見て確認する。
一瞬、むっとしてしまったが、ここは抑える。
そして猫背で俯きながら、すこし会釈らしき動きをした、次の瞬間――

――すたたたた

「お、おいっ!?」
突然、女の子は目にも留まらぬ早さで商店街を突っ走りはじめた。
しかもこの人海の中を、まる海流に乗る魚のようにすいすいとくぐっていく。
俺も師匠にしごかれているからアレぐらいはできるが、突然のことに面食らい、追いかけようとしたときには見失ってしまった。
「どうだった修夜?」
「持ち主だった。……けど、どこの誰かはまったく分からなかった」
後ろから寄ってきた一夏たちに事情を話す。
「逃げたって……、よっぽど恥ずかしかったのかなぁ」
一夏の呑気なボケを聞いて、俺も弾もこれ以上ツッコむ気力を無くすのだった。

結局、彼女は何だったのだろう……。


――――

一方、商店街を駅側から三分の二ほど進んだ地点。
昼時を過ぎた辺りで盛況するコーヒースタンドに、女子たち一行が先んじて一息ついていた。
一同は商店街の様子が分かる窓側で、二人用のテーブル三つほど連ね、即席の団体席を作って座っている。
「驚きましたわ、こんな場所でこれだけのお茶が頂けるなんて……」
カップに注がれた紅茶を堪能しながら、セシリアは店の紅茶の品質を称賛する。

『カフェスタンド・IPPUKU』
店はコーヒースタンドのチェーン店の佇まいそのものだが、そこに揃えられたメニューは、もはやコーヒースタンドの範疇を超えていた。
コーヒーの種類や淹れ方はもちろんのこと、豊富に取り揃えられたお茶の数々、多種多様なフードメニューとスイーツ、ソフトドリンクに乳飲料、挙げ句は葛湯に梅昆布茶にしょうが湯まである。

「本当にコーヒーだけでなく、色々あるんだな」
「……色々あり過ぎな気もするけど」
通路側の席で玄米茶を啜る箒と、オレンジジュースを口にする鈴。
(……誰もコーヒーを飲んでない)
その様子を、蘭はセシリアの隣でカフェオレを飲みながら眺める。
「でも、本当によろしかったのでしょうか……」
「いいのよ、いつものことだし。そのうちひょっこりやってくるわよ」
修夜たちより先にお茶を始めたことを気にするセシリアだったが、鈴は気に病むのも面倒な様子で言い放つ。
箒も数馬の行方を気にかけたが、それもよくあることだから放っておけと、鈴はばっさり斬り捨てる。
数馬の言動に思い当たる節があるのか、蘭は思わず苦笑いした。
そんな一同の様子を楽しそうに眺めながら、セシリアがおもむろに口を開いた。
「蘭さんは、やはり修夜さんとはお付き合いも長いのですか
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