暁 〜小説投稿サイト〜
Magic flare(マジック・フレア)
第4話 夢ノヨウ恋ノヨウ
[3/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、友人たちが去り、気分が白けたせいで幸福指数のポイントが減ったからだ。岸本も妻を不幸だと思う。かわいそうだと。心から思う。
 幸福がないと不幸になるのか……あるから不幸になるのか。
 またしても思い出すのは、あの気に食わない新人だ。いい歳して反抗期のような目をしている。その顔に心の中で問いかける。守護天使などないほうがいいと思うか。だがな、そう思っているのはお前だけじゃない。粋がったガキじゃあるまいし、それくらいわかれよ。仕方がない。仕方がないんだ。
『――今夜は太陽観測衛星〈みらい〉特集! 技師たちの愛と感動の秘話はこの後すぐ! テレビの前の皆様はハンカチのご用意を……』

 かれこれ十二時間前。
 廃ビルへの不法侵入者を警察に引き渡した後、廃庭園で明日宮クグチを見つけた。彼は庭園の入り口に背を向けて立ち、こちらを見なかった。
「明日宮!」
 呼びつけて、初めてこちらを振り向いた。
 顔は土気色で、汗をかいていた。幽霊でも……何か想像を絶するものを見たような目で、明らかに何かに怯えていた。そのことに岸本は驚いたが、隠した。
「なんで勝手にいなくなった」
 乱暴に問うと、少しずつ落ち着きを取り戻した様子を見せ、目を伏せてやがて謝った。
「すみません」
「すみませんじゃねえよ、理由聞いてるんだろうが」
「岸本さん、ここではやめましょう」
 マキメが止めに入った。岸本は苛立って、クグチや、マキメや、その場にいる全員を睨み回した。
「一旦帰るぞ」
 廃庭園を出る。その時、マキメがクグチに尋ねた。
「他に誰もいなかった?」
「はい」
「中庭の足跡、君の?」
 思わず足を止めかけると、クグチはすかさず「はい」と答えた。

 妻は寝たようだ。規則正しい息の音が聞こえる。
 ニュース速報を告げるチャイムが、芸人たちの声に被って聞こえたので、画面を見た。
『日本時間22時36分、太陽観測衛星〈みらい〉打ち上げに抗議するQ国元首は、〈みらい〉打ち上げが実行された場合は武力でこれを破壊すると発表した』
 そうテロップが出た。続きを待った。しかしそれで終わってしまった。岸本は次々チャンネルを変えた。しかしニュースはやっていなかった。
 ホームパネルの電源を切った。遠くでスカイパネルが喚いている――戦いましょう! 戦いましょう!

 ―2―

 クグチは自転車を買った。一番安いものだが十分だ。それで出勤した。
「いつからああいう人たちはいるんですか?」
 その日は午後から新式銃の研修、午前はマキメが道東支社の各建物内を案内してくれる。
「どういう人たち?」
「人目を忍んで都市内部に幽霊を招じ入れようとする人たちです。他人の守護天使を汚染する危険を冒して、組織的にやろうという人たちは」
「はっきりしたことはわから
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ