暁 〜小説投稿サイト〜
横浜事変-the mixing black&white-
互いに一枚岩の先に知人が立っている事に少年達は気付かない
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て合戦よろしく殺し合うというのは異例中の異例。でも正面から立ち向かうという事は、死ぬ危険性も高くなる事であり、軽く見てはならない。

 それにも拘わらず赤島は気楽そうに言っていたが、現実問題として全く楽ではない。ケンジは両腰にマウントしてある二丁の拳銃から重みを感じて、はぁっと息を吐いた。溜息ではない。緊張を少しでも取ろうと無意識に出たのだ。

 「どうした暁、帰りたくなった?」

 隣にいたチームBの殺し屋であるモヒカンがからかい混じりに言ってくる。このチームは彼と赤島以外は無口な性格という奇妙な構成をしており、他の3人とは軽く会釈する程度だ。

 「いえ、そんな事無いです。気を引き締めたっていうか、そんな感じ」

 「任せな、いざとなったら前に立って防弾代わりぐらいにはなってやる」

 「冗談キツいですよ」

 「本気だよ。お前さんは期待の新星なんだからさ」

 サラッと変な事を言う彼に、ケンジは少し顔を引きつらせて呟いた。

 「それ、何です?」

 「え、狩屋の奴が言ってたぞ。『うちのエース様は稀代の殺し屋なんだぜぇ』って」

 「……」

 ここにきても、あの金髪男はケンジの頭を痛ませる因果を生み出していたようだ。ここで軽く狩屋に対する文句でも言おうかと思ったが止めておいた。まるで彼が自分を励ますために残しておいた言葉のように感じてしまったからだ。

 ケンジの中で少しだけ緊張が薄れた。肩や腕の強張りが解けていくような感覚を直に受け取って、彼は微笑を浮かべる。

 それと同時に赤島が仲間達に向かって小声で呼びかけた。

 「あっちの準備は整った。第二波が撃ち込まれ次第、俺達も出撃する」

 「「「了解」」」

 「予定通り、宮条には出撃タイミングを見てもらう。頼むわ」

 「行ってきます」

 丁寧な口調でバンから降りていく宮条。彼女は自身の隠密性を生かして敵の近くまで進み、他の仲間による狙撃を見届ける。そして二発目が撃ち込まれたら携帯で合図を出し、赤島達を進攻させるという重要な役割を持つのだ。

 彼女は走って山下埠頭へと続く道路の先へと向かう。その後ろ姿を見ながら、ケンジは彼女が言っていた言葉を思い出す。

 『過去はね、無慈悲なまでに変えられないの』

 確かにそうだ、と彼は思う。例え方が古いが、ゲームのようにリセットしてもう一度やり直す事は不可能だ。一分一秒が過去というものを積み上げ、それらは接着し合って一生動かない。どれだけ最強の殺し屋がいても自然の摂理を打ち負かせはしない。過去というのは、その人の積み重ねであり、同時に一生背負うものでもあるのだ。

 『だったら……私達は、『過去』だけを飲み込んでやればいい。頭の中には、いつだって彼らとの思い出が
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