暁 〜小説投稿サイト〜
バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
第二章 彼と彼女の事情
第十二話  彼女の事情
[5/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
分かってたんだろ?妃宮が重要人物だってことを。だから懐柔もした。どうだ?」
「………………」
男は自分の問いかけに対して女が黙りこくってしまい、何も答えないのに不満げではあった。
しかし、思い返せば何と返してくれても意味などなく自分の好奇心しか満たされないだろうと思い直す。古人の言うとおりだろう
「沈黙は金、多弁は銀だというが、まぁいい。Bは13:00(ヒトサンマルマル)に総攻撃を仕掛ける、Cも手伝ってくれ。」
「……分かった。二部隊ほど送るわ。」
女からようやく返答が返ってきたの受けて、男はにやりとその口元を歪めた。
「それはありがたいね、友香の心がよく分かるよ。大好きな千早さんと戦うなんてとても出来ないってねぇ?」
「千早さんは関係ないじゃない!!」
机を叩きつけて抗議の意を示す女に対して男は制服の内ポケットから財布を取り出し、その中の一枚の切り札を女にちらつかせる。
そして女もまたその切り札が何かということをよく知っていた。
「まぁ、もう少し友香が融通してくれたら俺は“これ”をばらまかなくて済むし、友香も恥ずかしい思いをしないで済むと思うんだけどな?それよりも、その“大好きな千早さん”にこれをプレゼントするって言うのはどうだ?」
目の前でひらひらと上下に揺らされるL版の用紙。
そこに印刷されている写真と男の挑発的な顔に、彼女はこれ以上ないほどの屈辱を味わされる。
手を伸ばしたところで奪い取れないのは既に実証済み、いくら運動能力が高くとも無理だろう。
そもそも奪い取ったところでデータは彼の手元にあるのだし、第一に男の手にある写真がそれ一枚だという保証など更にない。
女にはそれだけを考えられる頭があり、逆に男もまたそれを十分に分かっていてやっているのだ。
あくまでも男の手の内にある主導権には逆らえず、従順にしなければならないと理性では理解できている。しかし怒りは高まる一方で。
彼女の唇が悔しげに曲げられ、怒りの余り肩がわなわなと震えていることを彼女は自覚していない。
それを興味深げにのぞき込む男の顔は喜悦に緩んでいる。
「……一階に展開中の二部隊を階段から直接屋上へ、三階に展開中の二部隊と私の本陣まるまるで四階渡り廊下へ行くって言うのでどう?」
唸り声ともつかぬ声のまま、そう言い切る彼女に男はわざとらしく顔をしかめる。
「友香、俺は何も友香のクラスの設備が落ちることなんて望んでないんだ、だから友香はBでゆっくりしていていいんだよ。」
「私だけのうのうとしているのにクラスのみんなには突撃しろ、だなんてそんなの私には無理よ!!」
机を叩きつけるぐらいしかその腹立ちをぶつける先のない彼女は、既にその手が真っ赤に染まりつつあった。
「それまた素晴らしい義侠心をお持ちだ。分かった、それなら直接指揮をとって貰おうじゃな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ