第3話 廃庭園ノ少女
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の銃身で思いきり鼻を打った。
「す、すいません……」
島が消え入りそうな声で謝るが、速度を緩める気配はない。クグチは鼻の痛みと引き換えに気がついた。銃身に何か詰まっている。
『本日は道東居住ドーム完成十周年記念式典にあわせた発表があるとのことでございますので、まずはそちらからお願いします。どうぞ』
かと言って銃口を覗きこむ勇気はない。
『はい、えーっ、初めまして、オーロラ・サイバネティクス・ジャパン道東支社の横尾でございます――』
ふと外を見た。一般市民の姿は見えない。守護天使もいない。
降りしきる花もない。
ずいぶん寂れた場所に来た。
冷たい漆喰の壁が並ぶ街路に、四人、五人、仲間の特殊警備員たちが張りこんでいる。みな標準形式のUC銃を持っている。
『……えーっ、まずは〈みらい〉の話ですね。いよいよ来月ですね、えーっ、約二週間先にですね、いよいよ太陽活動観測衛星〈みらい〉の打ち上げがですね、行われる予定でございましてね、えーっ』
「万乗さん、この銃何なんですか」
クグチは小声で聞いた。助手席の岸本が鋭い目で振り返る。
「対人用の銃だよ」
クグチはしゃべらない。
島もしゃべらない。
マキメもしゃべらない。
『この〈みらい〉に実装された外電磁防御システムはですね、非常に高度な装置でございまして、簡単に説明しますと外界の磁気嵐に対してですね、えー非常に強い耐性がございまして、えー我がACJ社が開発した特殊な信号のみを選別し受信する機能を具えておりまして』
岸本もしゃべらない。
クグチは総毛立ち、銃を投げ捨てたくなる。
「人を撃てと言うんですか」
「そういうことだ」
クグチはイヤホンを切った。
「無理です。人を殺せって? なんでいきなりそういう話になるんです?」
「なんでいきなりって、それはお前、こっちの台詞だ。 人を撃てとは言ったがな、安心しろ、非殺傷兵器だ。麻酔銃みたいなもんだ。入ってるのは麻酔じゃないがな」
「じゃあ何が」
「新開発のマイクロチップだ。それで撃たれてもさほど痛みはないが、チップを撃ちこまれた人間は手術で除去しない限り生涯電磁体に忌避される」
「忌避って、生涯守護天使を持てないということですか」
「そうだ」
「ACJが提供する全ての電磁体も幻覚も見えなくなると」
「そういうことになるな」
「……聞いてませんよ、俺、そんなの。話が違いすぎる」
クグチは口調を強めた。
「俺はそんな契約で道東に来たんじゃない。人を撃てだなんて、南紀ではそんな説明受けてませんよ! 受けてたら断ってた」
「それは俺の責任ではないな」
岸本は冷たい声で言った後で、ついでのように付け加えた。
「あ、あとそれ実験用の試作品だからな。壊すなよ」
恐怖と怒りが併せて身の底から湧
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