第3話 廃庭園ノ少女
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
避けてはいられない。クグチとて働いて生活をしなければいけない。
『――のドームが完成してからちょうど十年という日を、えー』イヤホンをつけると、スカイパネルに大写しになった市長の声が聞こえてきた。『こうして市民のみなさんと、えー、平和のうちに迎えることができて、えー』
前の車が白鳥だ。
クラクションを鳴らして追い抜き、花も紙ふぶきも非実在のサーカスも蹴散らして、マキメは車をACJ道東支社西棟の前に放置する。
「急いで!」
正面玄関から奥へ。
十三班の警備員控室を開け放つ。既に無人だ。マキメが二重ロックを解除して、全班共有の準備室を開け放った。
「これ! 奥の列の左から二番目!」
鍵が投げ渡された。付属のアクリルボードに〈M‐20〉とある。ロッカーはすぐ見つかった。制帽とジャケットを取り、奥へ。
さらにロック。マキメが解除する。
UC銃保管庫だ。
「十三班は一番奥!」
M-20のUC銃保管スペースで、クグチははたと足を止めた。
見慣れたUC銃の他に、見たこともない型式の、やたら丈の長い銃がある。
ライフルに似ている。
ライフルのはずがない。
「君は普通のUC銃だけでいい! 行くよ!」
「はい!」
クグチは大きく返事をした。出動要請から既に五分は経っている。UC銃保管庫の扉が開いた。
「おい万乗! 何でまだこんな所にいるんだ!」
岸本だった。夜勤明け直後の寝入りばなだったらしく、目は充血し、髪はぼさぼさ。せかせか歩いてくる姿は昨夜より不機嫌そうだ。
「すみません――」
「おい新入り」
岸本は自分のUC銃を取りながらクグチに冷たい視線をくれた。
「そっちの長い方の銃を持ってけ」
クグチは銃器に詳しくない。
南紀で使っていた物と同じ型式のUC銃しか使えない。
困惑してマキメを見た。マキメもやはり、岸本の指示に動揺を隠せないでいた。
「岸本さん、明日宮君はまだ何の説明も受けていません。その銃の使い方だって」
「銃の使い方なんざどれでも同じだろうが。構えて、引き金を引くんだ! おい、UC銃は使えるだろう」
「はい、ですが」
「ですがじゃねえ、なら持ってけ! 十三班に来たからには俺の指示に従ってもらうからな」
マキメが目をそらし、諦めたように頷いた。クグチは意を決して新しい銃を手に取った。冷たくて、ずしりと重い。
保管庫を抜ければ特殊警備車両の駐車場だ。
島が待っていた。クグチたち三人の姿を見て運転席に飛び乗る。全員が乗りこむと、島がアクセルを踏んだ。車は裏道に入り、隙間なく降る花の雨を突っ切る。
車内は窮屈だ。銃が大きいせいだ。
『ありがとうございます。続けてACJ道東支社、横尾センリ支社長にお越しいただいております――』
車が一際揺れた。不器用に抱える銃
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ