第3話 廃庭園ノ少女
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こに来たんですか? 見たところ、もともと特殊警備員じゃなかった人も多いようですが」
「守護天使のない人に限定で求人かけて、体力試験とかの後採用された人たち。島君なんかは軍隊上がりだから採用即決だったそうだね。ま、体力仕事だから」
「軍隊あがり? 島さんが?」
島の温厚そうな目つきや、何を言うにしても自信のなさそうな口ぶりを思い出してみた。昨夜会ったばかりの人間だが、そうは見えない。
「まあ、そういうちょっと変わった編成なわけ」
車は通りを進む。都市庁、緑地公園、消防署、学校などの、町の様々な主要施設と主要道路をマキメが解説する。
「でも、やることは他の班と同じですよね」
そう尋ねたのは小一時間ほど経ってから、「そろそろ戻ろうか」とマキメが言ってからだった。
返事がない。
運転席を見た。
前を見るマキメは眉が寄り、顔つきが険しい。
「ごめん」
「はい?」
「本当に何も聞いてないとは思ってなかった」
マキメが何か考えている。
考え、迷い、思いとどまり、その様子が隣にいてわかる。少し開いたままの唇が動き、何か言いかけたその時、車内で警報が鳴った。
マキメの左手が据え付けのトランシーバーに伸びた。
「こちら十三班Aチーム万乗。どうしました」
「こちら七班Aチーム佐々木です、十三班出動願います――」
男の声が記号を並べ立てる。初めのアルファベットと数字が位置を示していることは、なんとなくわかった。
「了解しました」
というマキメの言葉で交信は終わった。
「……君ホントついてないね」
「万乗さん?」
「一緒に来な。口で説明するより早い。何が起きるのか見るんだ」
マキメは制服の胸ポケットから眼鏡を抜き、装着した。車の速度がはね上がる。体が座席に押さえつけられた。
クグチも眼鏡をつけた。途端、あふれる色彩が視覚を圧迫した。
今日が都市の祭日であることをその時になって知った。
無数の花と紙吹雪が都市の天井から降ってくる。
舗道の人間が倍に増えて見える。
若者たちは守護天使の容姿を現実にはありえない肌、髪、瞳の色で飾り立てている。祭日にはよくある光景だ。小さな妖精程のサイズにして飛ばしたり、羽をつけたりして遊ぶのは主にキッズランクの利用者だ。利用者の年齢が上がるほど、守護天使の存在は私的な色合いを増し、公の場所には出てこない。
守護天使の容姿にも様々なパターンがある。動物や人の姿、天使や妖精といった架空の生物、樹木や石。
好んで人の形を選び、特定の人の顔、髪、声、性格に似せて、家族として扱う人もいるが――戦争遺族。老人。老婆。子供。女。苺果汁。クグチは朝食を戻しそうになるが堪える。
この仕事を続ける限り、人の生々しい孤独から目を背け続けていることはできない。いつまでもそれを
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