第3話 廃庭園ノ少女
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笑みを見せた。
「はい、昨夜来たばかりで……よろしくお願いします。席とか決まってるんですか?」
「おう。右側の手前から一班、二班、三班、四班……あんた何班?」
「十三班です」
途端に男の目もとが引き攣り、笑みが消えた。近くのテーブルで食事をしていた警備員たちまでもが口をつぐんでクグチを見る。
数秒してから男は無表情で奥に顎をやった。
「あっち」
万乗マキメがこちらを見ていた。片手をあげて手招きする。クグチは礼の言葉を呟いて、そそくさとテーブルの間を縫って歩いた。
十三班のテーブルでは、マキメの他に五、六人が一緒に朝食をとっていた。その中に島もいた。島の隣、マキメの向かいの席がちょうど空いていた。
「おはよう。寝れた?」
「おはようございます。はい。ここ失礼します」
座ると、マキメがケチャップやバターの入った籠を目の前に寄せてくれた。
「みんな、昨日話した新人、彼のことだから。南紀から来た明日宮クグチ君ね」
クグチと他の警備員たちは順に、名乗って挨拶をした。これで全員ではないとマキメは言ったが、ここにいる顔の中では、クグチと島が一番若いようだ。星薗と名乗る男が五十代半ばほど。肌は浅黒く目は充血し、ただならぬ陰気を漂わせている。他には、いかにもついこの間まで失業者だったような風体の冴えない中年の男が二人。あと二人は三十前後の、マキメと同年代の男女だった。
「七、八人でチームを分けて、実働八時間、三交代制になってる。残りのメンバーとは引き継ぎの時に挨拶しようか。今の内に聞いておきたいこととかある?」
「担当区域はどういう場所ですか?」
「担当区域は呼ばれた場所」
クグチはマキメを見つめる。
「十三班に限っては担当区域が特に決まってないんだ」
「呼ばれた場所って、では、他の班から応援求められたら行くみたいな感じですか」
「そんな感じ」
島を見た。彼もマキメに同意して頷く。
「呼ばれない時は何してるんですか?」
「待機時間は割と自由だよ。漫画読んでてもいいし、筋トレしててもいいし。いつでも出動できるように二人以上での行動になるけど。あと訓練。南紀でもそんな感じだったんじゃない?」
「そんな感じでした」
「私は副班長で新人担当だから、しばらく一緒に行動してもらうよ。島君とまとめて面倒見るから」
「よろしくお願いします」
「他は? 何かない?」
クグチは少し迷ってから尋ねた。
「ここの室長への挨拶は、引継ぎの時になりますか?」
今度はマキメが、そんな質問は予想外だという顔で見つめ返してきた。
「えっ、何? 室長? ああ。ええ? 室長への挨拶、必要かなあ」
何人かが忍び笑いを漏らした。
「上司になる人ですし、一応」
「室長ね。うん。向坂っていう人がいるけどぶっちゃけ十三班にはノータッチ
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