想い育てよ秋の蘭
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自分が安穏とした思考に駆られている。それだけ。誰かを失わないように行動して、後手後手に頭の行く先が回ってしまっているという一点。
朔夜は提案するだけで、許可を出すのは誰であるか、と考えれば、彼に行き着くのは必至である。
妹だと慕う少女を危険に晒す選択を、彼は是としたのだ。
この戦は、彼の色に染まっている。彼が作り出したモノの戦になっていた。
各々の小隊が最善を判断して動くあの部隊を、曹操軍全てを以って顕現させている。元よりそうなるはずだったのに、朔夜の命を秤に乗せる事で明確に表された。
詠が霞の元に行ったのならば、振り分けられた部隊全てには軍師が付いている。だから、曹操軍は今、天才的な頭脳を即時対応だけに使ってもいい。
「それでも連携を取れると信頼しているのですね、彼は。いえ、皆を信頼して自分の判断で独自に動け、というわけですか。
これは……黒麒麟の身体の在り方、なのでしょう。華琳様が作りたいと望んでいる、あの部隊と同じ……」
恐ろしい、と思った。
自分の力量のみが試される純粋な戦場でありながら、軍の様相を崩さないその方法が。同時に……そんなモノが作れるような人材が揃っているこの軍が。
頭が違うとやり方も違う。此処に“黒麒麟と出会っていない華琳”が居たならば、白馬の戦も延津の戦も、全く違う様相になっていたに違いない。
――それでは今の華琳様が求める勝ち方には届き得ない、通常通りの、力で抑えるやり方になっていたはず。
稟達軍師は、華琳の求めるモノに大体の予想を付けている。どんな勝ち方をすればそれが為せるか、判断した上で戦場を組み上げるのが曹操軍の軍師達。
華琳が洛陽に向かったのは……それを確たるモノにする為だと理解していた。その一つが……黒麒麟の身体が如き、覇王の為だけの軍を構築する事。
覇王は一つを求めるだけのモノに非ず。
――考えるな。目の前の戦を見なければ。
頭を振って、思考を回す。
真桜と朔夜が動く事によって変わるなら、自分はどう動けばいいのかと。この戦場を、どう動かせばいいのかと。
能力への信頼はあった。彼女が時機を間違うはずがない。なら、そろそろ結果が出る頃だ。
回る思考の中で、彼女は一つの解を選ぶ。
「陣容変化! 偃月陣に変化後、矢を放てっ! この戦だけで全てを使っても構いません!」
引き込むカタチでは無く、真正面から抑えるカタチに持って行く。
耐える時だ。時間との勝負であろう。ただ、それが出来ない軍でも無い。この軍は、彼女の主が信を置く部下達が、鍛えに鍛え上げてきた命が輝いているのだから。
「私も動きましょうか。郭嘉隊、于禁隊の後方に動けっ!」
郭の旗が動く。血みどろの戦場となっているその場所に。
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