想い育てよ秋の蘭
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でしか起こり得ないモノ。
凪の武力と沙和の部隊指揮で戦のカタチを為そうとしていたが、顔良の突貫でそれすら覆された。
寡兵の曹操軍としては、中央はもはや手の付けようがない。将の力量に任せるのみであった。
対して、秋蘭の方は稟の思惑通りとなっていた。一つは相手の、もう一つは自分の描いた図になったわけだ。
しかし、どうしても足を引っ張るのが兵数。見れば、強力な将が居ない場所が圧され始め、あまり時間を掛けるのは良くないとはっきり読み取れた。
――せめてどちらか。顔良の敗北か、張コウの捕獲もしくは敗走があれば場が覆るのですが。
じわり、と手に汗が湧いた。
将を信頼しているが、軍師としてそれが出来ない場合も彼女は頭に於いているが故に。
誰かが欠ければ士気は崩れるでなく跳ね上がるだろう。ただ、同じような狂気に身を落として勝てるかと言われれば否。そういった戦い方はあちらに一日の長があるのは明白。
自分が動くか、とも考えたがそれは出来ない。俯瞰する場を離れてしまえば戦術指揮さえ滞る。そんな状態に包囲を狙って動かれれば……まず物量差で負けてしまう。
だからじっくりと、こうして後背で動かないのが彼女の仕事。ある種の読み合いであり、夕への牽制でもある。
ふと、そういえばと思い至る事があった。
遠く白馬の戦で、“敵がこちらを優先した場合”の動き方。延津の兵数を多くしたのはその意味もある。白馬と延津を繋ぐ中間地点には、何があるのか。
――ダメですね、弱気になっては。延津は我らだけで守り切るのが一番いいカタチ。霞が動くにはまだ時期尚早。
手札にある神速を使う時機はまだ遠い。そう判断した時だ。
「郭嘉様……」
一人の伝令に声を掛けられた。
「どうしましたか?」
「はっ。李典様より伝令。百の工作兵を連れて黄河の上流より下り、小型投石器を用いて敵の船を燃やしに向かう、と。司馬懿様を付けられているので問題は無い、とも」
つらつらと説明が並ぶ。
徐々に、徐々に彼女の顔から色が抜け落ちて行く。
「……分かりました」
有り得ない事態でも、彼女は怯えを顔に出さず、兵を下がらせた。
――これは朔夜の独断? 真桜を失う事態となったらどうするのですかっ!
舌打ちを一つ。
曹操軍に於ける重要人物を簡単に扱う彼女に苛立ちが込み上げた。例えそれが成功したとして戦が有利になるとしても、近視眼的な行動を起こす彼女に傲慢さを感じた。
落ち着け、落ち着けと言い聞かせても、腹の中は煮え切らない。
ただ、ふと引っかかりを覚えた。
連携が重要な戦での独断行動は軍の崩壊を呼ぶ。それが分からぬ朔夜でも無い。
――しかし真桜だけでなくどうして朔夜まで……あ。
気付いた事柄は一つ
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