想い育てよ秋の蘭
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や蒼弓、覇の王佐……才ある者達に守られて来たのだから、心の底に甘えがあったのだろう。
しかし、彼女は乱世で戦うと決めている。戦い抜いて、この乱世を終わらせる助けをしようと決めていた。
此処に来る前、里帰りした時に親は泣いた、村の人も泣いた……それでも、もう人が戦で傷つかなくていい世の中を曹操軍の皆で作ると決めたのだ。
だから……
「だから……ボクが怖がっちゃいけないんだ。そうだよね、秋蘭様?」
赤と蒼が舞い踊る場所をチラと一寸だけ見やって言葉を零した。
自分が戦わなければ彼女を守れない。それだけは……絶対に嫌だった。
「みんなっ、後ろは任せるよっ!」
振り向かずに声を上げれば、応、とそこかしこから返答が上がった。
男の低い声であるが、背中を推された気がした。いつも共に戦っていた幼馴染が傍に居るような感覚が湧いてきた。
行ける行ける……心の中で呟いて、大きく息を吸う。
彼女が参考にするのは誰か。彼女が最も長く見てきたのは誰か。戦場でそうあれかしと願う姿は誰のモノか。
ふっと短く息を付く。何度も、何度も呼気を往復させた。断続的に繰り返される呼吸で意識を引き上げた。目の前で繰り広げられる死闘をそのまま、心の中身を覗き込む。
渦巻く感情は幾多。ただし、真っ直ぐに理解出来るモノばかり。
嬉しいのがあった。尊敬する大剣に少しでも近付けそうな気がして。
悔しいのがあった。季衣がこれからするのは嫌いな女の子が先に理解していた事でもあったから。
“その跳躍に逃げ場無し”
誰かが謳う燕の話。逃げる敵であろうとも、容赦なく屠るその姿。戦場が収束するまで舞い続ける一人の少女だからこそ、そのように謳われる話が出来た。何故、と思う間もなく理解する。
その少女は、戦場が終わるまで敵が何をするか分からない、と感覚的に知っていたのだと初めて気付く。
季衣は親衛隊として、向かい来る敵をずっと屠ってきた。敵が逃げれば追わず、華琳に命じられるまま、自分に与えられた仕事をこなしてきた。それは余りに安穏としたモノでは無かろうか。
――ボクの仕事は守る事だ。村に居た時からそうだった。
されどもこの戦場では、否、これから先も、そんな甘い事は許されない。彼女が成長したいというのなら。
――兄ちゃんが来てから親衛隊の皆は変わった。華琳様と同じようにボクの事でさえ守りたい……そんな風に皆強くなろうとしてる。
抗う心が生まれる。変わりたいと思った。変わるなら、どう変わる。
――お前と同じことでもやってやるさ、“ちびっこ”。でもボクはお前じゃない。兄ちゃんたちみたいにもならない。ボクは……
戦場は平等で、醜悪でしかない。ならば誰かを守る為にこの武を振るわなければならない。戦場を
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