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乱世の確率事象改変
想い育てよ秋の蘭
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けられた言葉は、彼女が将として持つべき、一番大事なモノであった。

「私の部下達はあの姉者を守る事が出来るのだぞ? 姉者は夏侯淵隊が後ろに侍る時は絶対に振り向かん。だから、お前の後ろに立つ敵はいない。その背中を兵士達に預けてやれ」

 共に戦う兵士達にそこまでの信頼を向けれるモノは少ない。飛び抜けた武力を持つ彼女達だからこそ、実の所どうしても背中まで警戒を向けてしまう。流琉が居るからこそ安心して前だけを見ていた季衣に、秋蘭はそのやり方を学ばせようとしていた。
 曹操軍に於いて出来るのは、春蘭と秋蘭、霞に……今は居ない黒麒麟だけ。
 研ぎ澄まされた本物の部隊の兵というモノは、命を賭してでも彼女達の背中を守るのだ。
 ただ、自分が投げた問いかけの答えでは無くて、季衣はまた首を傾げた。

「でも、秋蘭様はどうするんですか?」

 ふ……と小さく息を吐いた秋蘭は目を瞑る。

「問題ない。少し異色な仕事場になるが……張コウだけでは我らには勝てんよ」

 ゆっくりと開いた目には、春蘭に似た獰猛な輝きが宿っていた。
 自信が燃えるその光は、季衣の心に何よりの安心と信頼を齎すモノであった。





 武器を振りながら戦前の事を思い出していた季衣は、戦況を見て理解に至る。

――ボクが引きつける事が出来たら秋蘭様の一騎打ちは邪魔されないし、この配置なら秋蘭様に万が一の事は起こりにくい。

 部隊を扱う時は兵が纏まっているのが通常なのだが、今回は全く違った。
 大量に射ていた矢は部隊個人が常備しているモノでなく運び込まれたモノ。未だ夏侯淵隊は武器を失ってはいない。
 その為、秋蘭は敢えて部隊をばらけさせ、兵士一人一人が個として戦えるようにしていた。それは奇しくも、明と夕の策と似たモノ。乱戦の様相を組み上げる事によって戦場を広げたのだ。
 曹操軍の陣容は秋蘭が居るこの場所だけ後方がぽっかりと空いていた。張コウ隊だけと戦えるように、稟からそういった陣容が組まれていた、という事。
 弓兵や弩兵は近距離では余り力を発揮しない。剣、戟、槍の類を面と向かって相手取るには不足なのは自明の理。
 しかしこうして場を広げたならば、近づいてくる敵兵を狙う時間が出来る。間が出来れば出来るだけ直射出来る兵士が増える。多方向からの矢には、如何に死兵の群れであろうと対応しきれない。
 稟は秋蘭の部隊の精強さに賭けた。夕は明の部隊の狂気に賭けた。戦術の選択は同じにして、どちらも被害が大きくなるモノでもある。
 ただし、袁家側の不可測として季衣が居た。
 彼女の武器は“岩打武反魔”と名付けられた鎖付きの大きなフレイル。あらゆる距離に対応できる重量武器であり、春蘭と共に居るから気付く者が居なかったが、流琉と同じく遠近両方の武器な為、実は秋蘭の
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