想い育てよ秋の蘭
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それがあたしの次の仕事。交換条件を出してあげる。あたしをこのまま行かせるなら楽進と于禁とは戦わないし、“あの人の最終手段も使わない”」
最後の言葉の意味を頭に入れるには時間が掛かった。
「お前……」
「あたしの部隊で出来る人数は少ないよ。でも出来る奴もいる。死にたいなら追って来い、槍で貫かれたいなら追い縋れ、楽進と于禁だけは、必ず殺してあげるから」
言うだけ言って興味は無いと、
「張コウ隊、敵中央に突撃! 後発小隊、“黒麒麟の角を持て”!」
声を張り上げ目だけで問いかける。返答や如何に。此処を死地とする覚悟はあらんや、と。
遠く、中央には郭の旗があった。捕まえるなら此処で、軍を優先するなら張コウの提案を呑むべきだ。
乱戦で死兵の群れと相対するのは……今の状態の曹操軍では厳しい。凪と沙和を失う事も拙い。敵はまだ田豊隊という余力を残してもいるのだ。
「……っ……夏侯淵隊、郭の旗に集え! 向かってくる敵には容赦するな!」
近付いて来た兵士に伝令を一つ。稟にこれ以上戦場を長引かせるな、と。
秋蘭の声を聞いた明は満足そうに頷いた。
「じゃあね、夏侯淵。もう二度とこうして二人で踊る事は無いと思うけど……楽しかったよー♪」
子供のような笑みを向けて、彼女は駆ける。その瞳の感情は読み取れなかった。
張コウ隊は誰も武器を向けようとはしなかった。じりじりと後退しながら、明の後背を守るだけ。
背を見送り幾分。袁紹軍でも狂気に当てられていたモノ達も、徐々にではあるが部隊としてのカタチを為し始めた。
駆け寄ってきた季衣を見て、秋蘭は力が抜け、彼女の小さな身体に支えられる。
「秋蘭様!?」
「ああ……季衣、すまない」
「う、腕が……」
「なに、このくらい大したことは無い。治る程度の傷なのだ」
腕が紫色に鬱血した様子から、折れてしまっているのだと容易に分かる。
力なく笑みを零した。悔しかった、足りなかった、届かなかった……と。
「姉者に比べればこの程度どうという事は無い。まだ命を賭けるのに躊躇いがあったようだから――――」
「バカ――――っ!」
大きな声が耳を打った。季衣は力強い瞳で秋蘭を睨み、今にも涙が零れそうな程に、目を潤ませていた。
「秋蘭様は春蘭様が怪我した時哀しかったんでしょ!? なのにそんなことっ! ……そんなことっ……言わないでよぉ……」
目を瞬かせた。自分の事を、そこまで心配してくれるとは思わなくて。たかが腕が折れたくらいで何を言っている、と。
「死んじゃっても良かったような……そんな言い方っ……しないでよ……ボクは、皆は、秋蘭様を守る為に……戦ってたのに……」
あなたを失ったら、意味が無い。
周りを見れば、
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