想い育てよ秋の蘭
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ないかとか、卑怯とか卑怯じゃないかとか、そんなモノは下らないガラクタです。私達に任せた時点で華琳様の責ではありますが、失敗すれば死ぬか頸が飛び、成功しても不満ならば殺してくれて構いません……その程度の覇王なら、秋兄様と私が仕える価値などありません。
狡猾にして卑賤ならず、一人遥か高みに居るからこそ、華琳様は覇王に相応しい。
それに、こんな“些末事”を気にしてはダメです。最終結果で、示すモノの方があなた方の受け入れがたいモノですから」
正しく、凍りついた。恐ろしくて振り向くことも出来なかった。何が彼女にそこまでさせるのか、終ぞ分からなかった。
続いたのは哀しげな声。
「でも、どうか秋兄様を……嫌いにならないでくださいね」
耳に涼しく響く言葉の意味を、朔夜と秋斗の思惑を読み取れない真桜には分かり得なかった。
ただ、彼に狂信している少女への恐怖に何処か痛々しさを感じてしまう。
「秋兄様は、黒き大徳、なんですよ」
小さく少女が零した声は、波の音に攫われて誰の耳にも届くことは無い。
†
許緒――――真名を季衣。
天心万蘭な性格からか、曹操軍内部でも皆に可愛がられるも、春蘭の妹分な扱いを受けやすい彼女は、戦前に一つ、共に戦う蒼弓から話されていた事がある。
「徐晃の服の下を見たことがあるか?」
馬を共に進めている時に、唐突に投げかけられた問いかけ。
少しマセている流琉ならば、その言い方に顔を真っ赤にして俯いてしまっただろう。男の裸を見たことがあるか、と問うているに等しいのだから詮無きかな。季衣は気付かず、首を捻るだけであったが。
秋蘭の問いかけの意味は違う。
彼の袖の下は見たことがあった。凪のように目立つ傷は無かったが、古参の兵士と同じく、傷が幾多も走る長い腕。大きい傷も、小さい傷も見受けられる手。
――兵士に比べると細っこい身体の何処からあんな力が出るんだろう。
お前が言うなと誰しもがツッコミを入れるような事を考えて首を捻る季衣に対して、秋蘭はくつくつと喉を鳴らした。
「腕は傷だらけでしたけど……どうかしたんですか?」
「うむ、腕は捲ったりするから見えるのも当然か……朝早く、お前達が起きる前に、姉者や霞と毎日のように鍛錬を重ねているのだがな……」
含みのある言い方。まだ先は続けられず、興味津々と言った様子で秋蘭を見つめた。
遠い目をして空を見つめていた秋蘭が、漸く視線を落として口を開く。
「あいつはどれだけ暑くても服を脱がないから気付かなかったが……この前、姉者が暑苦しいから脱げと引っ張り上げていたので見えてしまったのだ。姉者と霞はさして驚かずに何事もないように接していたが、私は目を疑った。
あいつ
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