想い育てよ秋の蘭
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る犬の役目を明は受け持った。それでも逃げ出そうとする羊には、柵が必要だ。
中央の後背のみ、炎が燃える。脳髄の足りないケモノでは無く、結局は人なのだから、別に全てを燃やさなくともよいのだ。視界にちらつかせるだけでいい。そうすれば戦端の兵士達は前に思考を向けられる。
「郭嘉が中央に動いた。だから少し早める。斗詩は随分手古摺っているようだけど……読み通り。あなたの持つ甘さは此処で捨てて貰う。もちろん、あなたを殺すつもりなんか無い」
明と同じモノを作ろうとは思っていない。斗詩を見殺しにするつもりも無かった。
猪々子や麗羽の為に生き残るだろうと信じているから、心の甘さをある程度捨てさせつつ、自分のやり方を理解する武将として育て上げる心算であったのだ。
明は兵を育てた。夕は……将を育てた。ただそれだけの為の舞台。
味方の命を生贄に、敵の命を生贄に、長期的にも短期的にも欲しい結果を得る為に。勝ちを度外視した異質な思考は、誰にも読めるわけが無い。
「勝てば儲けものだからこれでいい。
……どうしたの?」
ふと、蹄の音が聞こえた。
動くなと命じてあるから兵士は動かない。なら、どういう事か。
「田豊様!」
伝令が駆けて来る。汗も絶え絶え、馬を駆って来る兵の瞳は、焦燥と怯えを孕んでいた。
辿り着いた兵士に、目を細めるだけで先を促す。
「ほ、報告致します! 増援部隊一万が張遼の襲撃に合い壊滅!」
延津の掌握を優先していたから、神速を引きつけられたなら問題ない。
その程度か……と別段焦る事も無く、夕は視線を外す。否、外そうとした。
「さらには、中間地点の拠点が大破。同時に、黄河の集積所では不審な漁船二隻から謎の攻撃を受け、船が十数隻燃やされました!」
驚愕に目を見開く夕は思考が止まっていた。
「な……なんで直ぐに報告しない? まとめの将は何をしてたの?」
三つの情報が一度に来た。それはまさしく異な事。だから、任せていた下位の将が報告を怠った理由を問いかけた。
「功に焦り、神速を止めるに至らず討ち死に。報告の兵は道中で張遼の部隊に殺されたかと。どうにか拠点のカタチは為しておりますが、纏まりが無く不安と焦燥に駆られております。私は白馬よりの増援部隊所属の兵士でございます故、張遼隊を潜り抜けて此処まで来た次第に。張遼の本隊は白馬に向かったと思われます」
しまった、と思った。
被害総数を聞きながら、自身の軍の脆さに苛立ちが込み上げる。
まるで自分達がしてきた事の蒸し返し。そっくりそのまま返されている。
自分達以外、報告兵への認識は甘い。夕や郭図は連携の重要性から何人か送るが、集められた豪族の部隊達はそこまで重要性を見ていない。
さもありなん。袁家の軍
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