第五章
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第五章
「お父さんの仕事の関係でね」
「じゃあどうするの?」
「どうするのって?」
「貴女はどうするの?」
こう娘に問うのだった。
「それで」
「それでって」
「何なら留学する?英語教師で」
「英語教師って」
英語圏の人間ならできることだった。英語の教師として世界の国に行くことができる。それに関してその国の言葉を喋れなくてもいいのである。
「それで?」
「貴女その資格持ってるし」
「ええ」
「じゃあ丁度いいじゃない。カレッジを卒業したらね」
「日本に」
「行って追いかけたらどう?」
こう娘に提案するのだった。
「それで」
「けれどそれは」
「想ったら何処までもやりなさい」
真剣な顔でだ。娘に話すのだった。
「ジュリエットになりなさい。ただしハッピーエンドになりなさい」
「ハッピーエンドのジュリエットに」
「それになりなさい」
こう娘に言うのである。
「わかったわね」
「そうなの」
「その時はね。わかったわね」
娘の背中を押す。心でだ。
「それじゃあね」
「ええ。じゃあ」
彼女も母の言葉にあまり積極的ではないが頷くのだった。そうしてだ。
それからまた数日経ってだ。また庭と道、それぞれの場所で二人は話をした。
「三日後になりました」
「三日後ですか」
「日本に帰ります」
京介は寂しい顔でだ。サリーに告げた。
「三日後になりました」
「そうですか。日本にですね」
「親父はイギリスに来ることはないみたいです、もう」
「日本に戻られてそれから」
「また海外に転勤になるかも知れませんがイギリスは二度とないそうです」
「わかりました」
「本当に。また縁があれば」
こう話してであった。そのうえでの言葉であった。
「御会いしましょう」
「あの」
しかしであった。ここでだ。サリーはついその言葉を出しそうになった。
後で自分も日本に向かうとだ。こう言おうとした。
だがそれは止まってしまった。どうしても言えなかった。言葉を出せなかった。
それに戸惑っているとであった。京介の方から言ってきたのだった。
「ではまた」
「はい・・・・・・」
どうしても言えないまま京介の別れの言葉を受けた。そしれそれから彼は庭の前に出ることはなかった。姿を見ることはなかった。
三日経った。サリーはその間にだ。遂に決意したのだった。
「行くのね」
「ええ」
母の言葉にこくりと頷くのだった。
「今からね」
「そう。じゃあね」
「まさか自分がこんなことするとは思わなかったけれど」
「それでもね。思ったらね」
「行かないと駄目なのね」
「恋や愛は手に入れるものなのよ」
ここでだ。このことも娘に告げたのだった。
「手に入れて。それから与えるも
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