魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方5
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達成するためには、俺が状況を作っていかなければならない。その為には、まずこの女を出し抜き、逆に利用する必要がある。その程度の事は今の自分にも出来るはずだ。でなければ、自分が戻ってきた意味などない。
「さしあたってはプレシア・テスタロッサの本拠地への道を確保する事かしら」
なるほど。さすがはその道の専門家という事か。的確にこちらの足元を見てくる。魅力的な提案だと認めるより他になかった。
「何故俺に移動手段がないと思う?」
「あるなら、あんなところで幻影相手に遊んでいる訳がない。違うか?」
言ったのはクロノだった。それもまぁ、見当はずれとは言い難い。実際のところは衝動に飲まれてそれどころではなかっただけなのだが……そうでなかったとしても、手段があったとは言い難い。だが、
「お前は馬鹿か? 俺の手元には何でも願いを叶える魔石が五つもあるんだぞ。その程度の事は出来るに決まっているだろうが」
正確には八つあるが、今の時点でそんな事を馬鹿正直に告げる必要はない。もっとも、他の反応がもうない以上、残り三つは俺かフェイトが持っているのは明白なのだが。
「誤解していたけれど」
まるで話の流れを無視するように、リンディが言った。
「あなたはとても慎重な人なのね。万に一つでも暴走したら、なのはさんや他の人を巻き込んでしまう。だから、あなたはどんな状況であっても今までジュエルシードを使おうとはしなかった。違うかしら?」
違うと言えば違うし、違わないと言えば違わない。確かにジュエルシードの制御は簡単ではない。だが、それ以前に未知の力を前に暴走する危険があったのは、むしろ自分自身だ。相棒が傍にいなかった以上、あまり迂闊な事も出来なかった訳だが……まぁ、周囲への被害を恐れたと言う意味では同じ事か。少なくとも、つい先ほどまでならそうだった。
とはいえ、いくつかの意味ですでに状況は変わっていた。
(アルフとユーノがいるなら……そこまで派手に使う必要もない)
この二人なら道を開けるはず。それに加えてジュエルシードも手元にある。二人の補助程度であれば、今の状態であっても暴走の危険も少ないだろう。これでもかつては大魔導士とまで呼ばれた身だ。さすがにその程度の自負はある。管理局と手を結ぶ事で生じる危険と利点を比較すれば、まだ危険が勝る。
「それに。ここで私達を巻き込んでおいた方がお互いのためだと思わないかしら?」
「何?」
言わんとしている事は分からないでもないが――しかし、巻き込んでおいた方が、と来るとは思わなかった。
(ここが勝負どころ、かな?)
殺戮衝動を飲み込み、努めて冷静さを保つ。性質の悪い熱病のように、殺意は容赦なく理性を飲み込もうとするが、飲み込まれる訳にはいかない。最善が選べないのなら、限りなくそれに近づけた次善を用意しなければ
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