魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方5
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なかった。むしろ、一番動物に警戒されやすいのは光自身のはずなのだが。
「なのは。お前も久しぶりだろ? 一緒に向こう行ってろ」
「うん……。だけど、置いていくのはなしだよ?」
「分かってるよ」
これもまた奇妙なやり取りだった。いや、どこがどうという訳ではないのだけれど――何かいつもと違う気がする。
「……何か用か?」
なのはとすずかが部屋を出て行っても、私だけが出て行かなかったからだろう。光は少し困ったような顔で言った。
「用って言うか、色々と問い詰めたい事があるんだけど……」
「問い詰めたいってお前な……。訊きたいとか別の表現はないのか?」
「『訊きたい』くらいでアンタが口を割るとは思ってないわよ」
「ふむ。それは確かに一理あるな」
「せめてそこは否定しなさいよ!?」
あっさりと認めた光に思わず叫び返す。何て言うか、いつも通りの会話だった。思わず肩の力が抜ける。
「ああもう! うだうだ考えてた私がバカみたいじゃない! 良いから吐け! この子は一体何者なの――って、喉の奥に指突っ込んで吐こうとしてんじゃないわよ!?」
「だが、お前が吐けと――」
別に本気で吐こうとした訳ではない事くらい、いい加減分かっていたのに。伸ばした指を露骨に口元まで持っていった時点でついつい叫んでしまった私に、光が白々しく言ってくる。皆まで言わせず、今度こそ全力で叫んだ。
「私が言ったのはそういう意味じゃなあああああああああああああああい!」
「相変わらず見事な肺活量だな」
ぜーぜーと肩で息をする私に、光が感心したように言った。ああもう、この男はつくづく本当に。
「というか、お願いならもうちょっと可愛くしてみたらどうだ?」
「お願い☆ お話聞かせて欲しいの♪」
「……寒いぞ、お前」
本気で鳥肌が立った様子の光に、無言のまま渾身のドロップキックをお見舞いした。乙女の純情を弄んだ罪は重いのだと言う事を今日こそこの男に教えてやる。
「スカートで飛び蹴りはお勧めしないな。見えてるぞ」
あっさりと避けた挙句、光はそんな事を言ってくる。悔しいが、恭也やすずか並みの運動神経を持つこの男が相手では乙女の尊厳を代償とした一撃も届かないらしい。いや、
「なっ!?」
あの子が前足で光の足を掴み、さらに服の裾を咥えてくれた。千載一遇。一期一会。犬の恩返し。この好機に、今までの借りを熨斗つけて返す!
「乙女の純潔を穢した罪を思い知りなさい!」
渾身にして会心の一撃が光の顔面に直撃した。この速さなら見ている暇もないはず。
「きょ、今日は厄日か……?」
我ながら惚れ惚れするようなハイキックの直撃をくらい、さすがの光も片膝をつき呻いた。ひょっとしたら、恭也並みの戦果ではないだろうか。ふと思い、その考えに少しだけ気分がよくなる。まぁ、一発叩き
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