魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方5
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に着こなしている事だろう。この格好を過去に一度だけ見た事がある。
(これって、あの日と同じ格好よね……)
これは、おそらくは私の人生において重要な出来事であり、きっとこれからも重要な出来事でありつづけるはずの『あの日』に着ていた服だった。
「それは、もちろん構わないけど……」
あの日が平穏無事な一日だったかと言われれば、全力で否定するしかない。うっかりすれば映画化されてもよさそうな――少なくとも、我儘で傲慢で身勝手だったお嬢様が我が身を振り返って反省する程度には色々とあった一日だったと言える。
「助かる」
もっとも、それでさえこの少年――高町光にとっては大した事のない一日だったのかもしれない。時々そんな事を思う。私自身も何故そんな事を思うのか分からないのだけど。
「あ、待ってよ」
その後ろを親友が――彼にとっては妹であるなのはが追いかける。それもまた、今に始まった事ではない。むしろ、そうでなかった日を思い出す方が難しいくらいだ。もちろん、ここ一ヶ月程を除いて、だけれど。
(まぁ、あの子もあの子で奇妙って言えば奇妙なんだけどね)
二人を――もっとも、光はまるであの子がどこにいるか知っているような様子だったが――案内しながら、声にせず呻く。
これでも犬種には詳しいつもりだ。けれど、あの子の種類は未だにわからない。特徴がない訳ではない。赤毛という時点でまず珍しい。そのうえ額には宝石のようなものが埋まっている。そんな犬は聞いた事がない。
「あ、なのはちゃん、光君! 久しぶりだね」
ちなみに、あの子は驚くべき回復力を見せているが――それでも、命に関わる酷い傷をいくつも負っていたため、大事を取ってあの子のケージは室内に置いてある。その部屋に入ると、先にお見舞いに来ていたすずかが言った。
「えへへ。すずかちゃん、お久しぶり!」
再会を喜ぶ――といっても、そんなに大げさな事はないけれど――二人を他所に、光はケージへと近づいていく。それに気付いたのだろう。あの子も顔を上げた。
「派手にやられたな」
にやりと笑いながら、光は奇妙な事を言った。
「その子の事を知ってるの?」
「ああ。ここ最近知り合った奴の飼い犬でな。しばらく見かけないからどうしたのかと思ったが……どうやら、ロクでもない目にあっていたらしい。お前が保護しててくれて正直助かったよ」
ちゃんと説明してくれたようにも思うが……落ち着いて考えるとやっぱり情報量が少ない。とはいえ、普段から人を煙に巻くのに慣れている光の口を割らせるのはさすがの私にも無理だった。そして、案の定こんな事を言い出す。
「どうやら少し脅えているようだな。悪いが少し外してくれるか?」
「……まぁ、いいけど」
この子は今さら私やすずかに脅えたりはしないし、なのはにも怯えているようには見え
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