魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方5
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ならない。……となると、これはむしろ好機かと言えなくもないか。
言うまでもない事だが――救った後の事を考えるなら、管理局と敵対したままというのはどうにも具合が悪い。とはいえ、現状で俺からその関係を解消しようとするなら、それこそこの女どもを人質にして脅迫するか、管理局そのものを壊滅させるくらいしか今のところ方法がないように思う。……まぁ、衝動の影響から完全には脱し切れていないということもあるだろうが。だが、
(管理局を黙らせるほどの手札はさすがに持ち合わせがない、か……)
というより、そもそもろくな手札がない。さらに言えば、手に入れる当てもなかった。それを向こうから解消してくれるというのなら、それは望外の好機だ。利用しない手はない。となると、今やるべき事は主導権の奪い合いか。ここで恩を売りつけられる訳にはいかない。いや、むしろこちらが可能な限りの高値で売りつけなければならない。それには、向こうの望みが知りたいところだ。
「何が望みだ? 今さら俺に何を望む?」
そして、その代償は何だ?――それが分からない限り、迂闊な事は出来ない。それが相手を皆殺しにするより性質の悪い事態にならないと言う保証などないのだから。
「私の望みは、この世界を救うこと。あなたと協力すれば、そのための犠牲を減らせる。なくす事だって出来るかもしれない。もっと早くそうするべきだった。そう思ったのよ」
彼女の返答もまた簡潔なものだった。綺麗事だと言えばそれまでだが……綺麗事だからこそ、彼女がそれを叶えようとしているのが分かる。もっとも、彼女がエレインほど一途かどうかは分からないが――それでも、示された覚悟がそう安いものではない事くらいは理解できる。
「甘いな。何事にも代償は必要だ」
だからこそ、その言葉に思わず笑ってしまった。それがどれだけ高くつくか、本当に分かっているのやら。ああ。だが、それでも――
「だが、いいだろう。その申し入れを受けよう」
憤怒。暴食。生欲。色欲――欲望には他にも様々ある。それは時に思わぬ形で姿を現し、時に狂気と、時に邪悪と呼ばれる。だが、本質的な部分で望み欲する事に善も悪もない。不条理に対して怒ること。空腹を満たそうと思うこと。生きようと足掻くこと。誰かを求め共にありたいと欲し……さらに交わり血を残そうとすること。誰もが当たり前に持っている願いであり、望みである。その根底にはただ意志があるだけだ。その意志の強さこそが――代償が何かなんて、考える隙もないほどに強烈な意志が、時に自らを魔物に変えもする。ただそれだけのことに過ぎない。そう思う。そして、彼女のそれも同じだろう。まぁ、それなら――
(ここらが落とし所か。……やれやれ、つくづく俺もやきが回ったな)
その結果、背後から刺されるとして。生粋のペテン師と、綺麗事を大真面目に語れるバ
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