暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第一層 偏屈な強さ
≪イルファング・ザ・コボルドロード≫ その壱
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ームワークが要求されるのだから気を抜くことはできない。

 次に退路を確認。良し。情報通り扉が閉じられることはないようだ。しかしこの距離だとあまり撤退はできない。長すぎるのだ。ざっと見て最速撤退時間がおおよそ三分、普通に行けば五分、混乱状態だと十分は見積もるべきだろう。撤退は進軍よりも難しい。最も犠牲者が生まれやすいフェイズだ。できればしたくない。

 そんなことを考えているとコボルドの王、イルファングが侵入してきたプレイヤーに怒声を上げた。

「グルルアアアアッ!!」

 ≪イルファング・ザ・コボルドロード≫。その王の姿は昨日も見たのだが、命を懸けて戦うとなれば昨日よりもずっと恐ろしく感じる。青灰色の毛皮、二メートルを超える逞しい体躯。飢えた赤金色の爛々と輝く隻眼。右手には骨で作られた斧、左手には皮を張り合わせた円形盾(バックラー)。腰の後ろには長さ一メートル半近くの鞘――情報では湾刀(タルワール)を差している。
 
 敵影を確認した青髪のレイドリーダーが高く掲げられたままの直剣をさっと振り下ろた。

 戦闘開始。全部隊が≪イルファング・ザ・コボルドロード≫と三匹の≪ルインコボルド・センチネル≫に向かい駆ける。

 最初に接敵したのはA隊のヒターシールドを掲げる戦槌(ハンマー)使い、それに続いてタンクA隊のメンバーが続く。その左斜め後方にエギルがリーダーのタンクB隊、その右にディアベルの率いるアタッカーC隊が陣形を為す。ABC隊で三角形(トライアングル)を作り、各隊がまず一匹ずつセンチネルと接敵。

 ここで俺達H隊の出番だ。ABC隊がコボルトを倒しても良いのだが、ポットを減らさないためにも集中力を削らせないためにもH隊は結成された。各部隊のリーダーがせわしなく自分の部隊へ指令を出している。その中に一つ、俺の声が響く。

「キリトはC隊のカバー! ギアはA隊B隊のセンチネルを釣ってくれ!」

 駆けながら後方のH隊に指示、「おう!」という二つの少年声が耳に入り、キリトとアスナが右のディアベルのC隊へと俊敏値を全開で駆け、俺とインディゴとギアが左のエギルのB隊のほうに駆けていく。H隊で最も俊敏値が高いのはギアだ。まずギアがエギルと(つば)()り合いをしているセンチネルの銅を水平切りソードスキル≪ホリゾンタル≫で攻撃、次に若干遅れて俺がセンチネルを攻撃、センチネルは当然のように俺の攻撃をゆうゆうと弾く。だがこれにより作戦は成功した。

 この一連の連携によってセンチネルのターゲットがエギルからギア、ギアから俺へと変動し、センチネルはエギルの部隊から俺の方へと向かって走りB隊から離れていく。俺とインディゴはこのセンチネルと戦闘をし、ギアはそのまま走ってA隊のセンチネルに接敵しターゲットを保持したままA隊から離脱、
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