魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方4
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―クロノだった。明らかに満身創痍。彼をここまで追いつめられる存在など、この世界には一人しかいない。つまり、
「光!?」
背後から剣を突き付けてくる男性が叫ぶ。
その叫びが示す通り、僅かに遅れて地面に降り立ったのは、黒衣を纏った魔導師。御神光だった。酷い火傷のせいだろう。全身を純白の包帯――右腕に巻かれている物とよく似ている――で覆っているが、間違いない。あの状況を生き延びていたらしい。だが、
『ヤベエぞ恭也!』
「分かってる! クソッ!」
言うが早いか、その男――恭也は私を突き飛ばす。この場合は、むしろ私を庇うべく、と先に言うべきだろう。次の瞬間には、彼は御神光と――その姿をした『魔物』と激突していた。異形の剣と、ただの鋼の剣が幾度も激突し、火花を散らす。
「アイツとまともに斬り合うだと……?」
のろのろと立ち上がったクロノが呻く。確かに、その二人は互いに一歩も退かずに打ち合っている。恭也という男性はただの人間であるはずなのに――その攻防は私にはとてもついていけそうになかった。それこそ、迂闊に割って入ればたちまちのうちに斬り殺されかねない。
「魔導師でもない人間があんな速さで動けるなんて……」
ただでさえ素早い動きだと言うのに、その動作一つ一つに一切の無駄がない。無理に絞りだした不自然な速さなどではなく、技術を研ぎ澄まし練り上げ、完成させる事で生まれる自然な速さ。神速という言葉を体現するなら、まさに今この光景こそが相応しい。
『そりゃまぁ、恭也の奴にとって距離を開かれるってのは負けに直結するしな。逆に間合いさえ詰めておけば、のこのこと魔法を使わせるようなヘマもしねえだろ。常に死角に滑り込んで狙いを定めさせねえってのも悪くねえ判断だ。今の相棒相手なら特にな』
なのはに抱えられたまま、何て事はないようにリブロムは言う。彼の体捌きを見れば、その理屈には納得だが――それを一体何人が実行できると言うのか。状況も忘れ思わず魅入ってしまうほど、二人の剣舞は完成されたものだった。まったく、この少女の家族は怪物揃いだ。
『だが、このままじゃよくねえな。これがただのチャンバラなら、相棒が恭也に勝てる訳がねえが……。この状況はマズい。今の相棒は完全に狂ってやがるから容赦がねえ。それに、いくら正気じゃねえとはいえ魔法を使っての殺し合いの経験なら、相棒の方が圧倒的に上だ。恭也がちょっとでも読み違えればそれまでだぞ』
確かに。あの『魔物』とほぼ互角に渡り合える実力は素直に絶賛に値する――が、当然と言うべきか、魔導師との戦闘経験はほとんどないらしい。未知の力を相手にしなければならない恭也の方が圧倒的に不利なのは疑いない。今の時点でも明らかに攻め手に欠いており、このままの状態が続けばいずれ押し切られるのは目に見えていた。
『つーわけで、チビ、ユー
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