魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方4
[16/16]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
あちこちに手を伸ばしすぎて自滅寸前なので、あまり褒められたものではありませんが」
まったく、あいつはもっと人を頼る事を覚えるべきだ――と、彼は小さく呻いた。
それは確かに。とはいえ、彼がその決断をしがたい状況だったのは間違いない。その原因の一端は私達にある。とはいえ、今さらどうこう言っても始まらない。目的のずれやこれまでの経験、出会ったタイミング。すれ違った理由はいくらでもある。それは仕方がない。大きく言えば、お互いに不運だっただけだ。そう言ってしまうにはあまりに大きな痛みをお互いに残したとしても。
(それでも、あの娘にとっては幸運だったんじゃないかしら?)
金髪の少女。彼女にとって、御神光と言う協力者を得る事が出来た事はきっと幸運だったに違いない。今まであの金髪の少女がどんな人生を歩んでいたかは分からない。けれど、彼女がようやく掴んだであろうその幸運を私達が踏みにじる訳にはいかない。
(さぁ、いい加減認めましょうか)
ロストロギアと言う巨大な――分かりやすい危険にばかり目を奪われていた。それを無断で集めようとしている彼女達は危険だ。そこで思考を止めてしまっていた。そのせいでお互いに無駄な争いに時間を費やす事になった。けれど、それもここまでだ。
(ロストロギアの暴走だけが悲劇ではない。考えてもみれば当然の事よね)
ジュエルシードを取り除くだけでは、この一件は本当の意味で解決しない。あの少女を救い出して初めて解決を見るのだ。それが分かった。これ以上、もう迷う事は何もない。
「ありがとう。参考になったわ」
彼に礼を言ってから、私は歩き出した。恭也は、それに対して何も言わない。遮るような事もなかった。その彼にもう一度一礼してすれ違う。
やるべき事は決まっていた。私とて自分の仕事には誇りがあるし、それに殉ずる覚悟もある。だが、彼に問われているのはそれよりもさらに根本的なものだ。何故、私はそれに殉ずるのか。何故そんな生き方をするのか、だ。それを示せと言うのなら――
「やってやるわよ」
たかが状況にも、意地があるのだと教えてやる。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ