暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方4
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要求するのは酷だった。
『つっても、あれはそもそも子ども用だって話じゃねえか』
 あの映画は子ども向けの『怪談』らしい。舞台は学校。出演者の――そのうち人間のほとんどが少女と同い年程度の役者だった。とはいえ、子どもを本気で怖がらせられる程度には作りこまれていた……と思う。それに、
 まず根本的に、これくらいの子どもであれば、まだ親や兄弟と寝るのは、何ら不思議ではないと思うのだが。
『大体、そのチビがその気になりゃあんな連中屁でもねえんだぜ?』
「そんな事をさせるつもりはない」
 リブロムの言葉に触発され、とある記憶が蘇ってきた。それは、この子の素質に気付いた日の事だった。
「どうしたの? 光お兄ちゃん」
 その子の『素質』に気付いたのは、ようやく六歳になったばかりの頃だった。馴染んだ感覚――だが、微妙に異なるそれは『彼女』と同じ魔力だった。質も量も、『彼女』に匹敵する。今の今まで気づかなかった事に疑問すら覚えたほどだった。
「何か怖い顔しているよ……?」
 その時、確かに自分は恐怖を覚えていた。妹にこれほどの魔力がある。その事実に。
「痛いよ。急にどうしたの?」
 恐怖に押しつぶされる様に、妹の小さな身体を抱きしめていた。強大な力は、必ずしも持ち主を守らない。むしろ、その運命を狂わせる事さえある。そんな事は、嫌というほど思い知っていた。それでも、それを承知で託してきた。その代償がこれなのだろうか。
「大丈夫だ……。大丈夫だから」
 自分に言い聞かせる。この子に『彼女』のような悲劇が訪れないように。自分達のように血濡れた道を歩まなくてもいいように。そのために自分が守ればいい。
 あの日、自分はそう誓っていた。
『まぁ、いいけどよ。だからって、あんまり甘やかせてばっかだとろくな大人にならねえぜ?』
 そんな相棒の言葉を聞きながら、眠りに落ちて――
「―――」
 気づいた時。自分は戦場に迷い込んでいた。対峙するのは、見慣れぬ魔法――いや、おそらくは『彼女』と同じ魔法を使う三人の魔女。白い魔女が、二人の魔女を迎え撃つという構図か。だが、二人同時に相手をしてなお、その白い魔女には余裕があった。二人の魔女も善戦しているが……一方的な殺戮劇に切り替わるまでそう長くはかかるまい。
「―――」
 何かを言い合っているが、聞こえない。だが、白い魔女の一撃が相手の一人を飲み込む。その時点でおおよそ決着はついていた……が、白い魔女はさらに追撃を加える。予想は正しかったという事だ。最後の一人が悲鳴を上げたように思えた。その時点で、覚悟は決まっていた。状況は全く分からないが――あとであの二人に訊けばいい。今の自分にどこまでの事が出来るかも未知数だが、それも関係ない。
 魔力を練り上げ、戦場に割って入る。白い魔女と向き合い――そこで、気づいた。
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