魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方4
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不死の怪物である自分がいうのも皮肉な話だが……どうやら、長生きというのはしてみるものらしい。それこそ自分に対して皮肉でも言うような気分で、呻く。
ここ最近……この器に収まり、御神光と呼ばれる様になってから、自分の身に起こった――自分を取り巻く環境に起こった奇怪な変化である。
「光お兄ちゃん!」
六歳になったばかりの少女が、自分の背後から飛びついてくる。全く、危険な真似をしてくれる。これでも、一応包丁を握って料理している最中なのだが。
「えへへ。ごめんなさい」
もちろん、彼女が近づいている事には気づいていた。とはいえ、自分でなければ怪我を
していただろう。指摘しながら軽く額を弾いてやると、その少女は笑って言った。
本当に反省しているのだろうか?――少なくない不安を覚えたが……それも今さらだ。
この少女が我儘を言ったり、こういうちょっとしたお転婆をしたりしてくるのは自分に対してだけだと言う事くらいは、分かっていた。やれやれ、他の連中にもその調子で素直に甘えればいいのに。そう思わなくはないが。
「それでね! すずかちゃんとアリサちゃんと――」
二人きりの夕食。それでも、この少女が満面の笑みを絶やす事はない。今は色々と事情があって少女の両親や他の兄姉は不在だが……それでも、このささやかな成果を噛みしめながら、相槌を打つ。そして、夕食を終えてからしばらくして。
家主から与えられた自分の部屋で、その少女は寝息を立てていた。
『甘やかしすぎなんじゃねえのか、相棒』
少女の襲撃に際して、咄嗟に放り込んだベッドの隙間から這い出し、相棒――偽典リブロムがため息をつく。
『自業自得だろうが』
一人で寝れないなら、仕方がないだろう?――言うと、リブロムはさらに深々としたため息をついた。もっとも、その言葉には一理ある。
この少女が一人では眠れないなどと言い出した理由は、今日の夕食時にあった。
新たに目覚めたこの『世界』はとにかく機械文明が発展している訳だが――その中に、テレビという機械がある。主な用途は情報収集。もしくは単純な娯楽か。この少女の場合は、まだ後者の割合の方が圧倒的に上だろう。少なくとも、夕食時の使い方は明らかに娯楽に傾注していた。それはいい。それはいいのだが、問題はその娯楽の内容だ。
『あんな可愛い連中の何が怖いってんだ?』
別段皮肉を言うでもなく、ごく普通の疑問としてリブロムが言った。少女が見ていた映画なる演劇に出てきた魔物は、所詮は造り物だと言う事を差し引いたとして――確かに自分達の感覚からすれば、取るに足らない存在だった。あれなら、オークやゴブリンの群れの方が遥かに――特に人型の魔物を相手にしている時は――恐ろしい。とはいえ、それは長年化物どもと殺し合いを続けてきた自分達の感覚だ。この少女に
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