魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
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、しかも一人で姿を見せるとは思ってなかった。ぞろぞろと下っ端を引き連れて捕まえに来たってんなら、強行突破でも良かったんだけどよ。このままじゃこっちから攻撃を仕掛ける訳にもいかねえ』
もちろん、無視もできない。なら、選択肢は一つしかない。どの道、リンディとの接触は避けられない。まずは話を聞いてみるべきだろう。ゆっくりと地面に向かって降りる。
(そうだよね。まずはちゃんとお話ししないと……)
自分に言い聞かせるように呟く――と、そんな私に気付いたのか、リブロムが言った。
『話を聞くのはいいが、のんきに『お話し』している暇はねえぞ』
「うん。分かってる」
もう時間がない中での出来事だ。さすがに焦りよりももう少しだけ刺々しい感情を否定する事は出来なかった。それでも、何とか誤魔化した事にして地面に降り立つ。
「なのはさん……」
「何の用ですか?」
声が刺々しい。自分でもそう感じた。自分で思っているよりも遥かに感情を誤魔化しきれていないようだ。いや、違う。これは――…
「なのはさん、もう一度ちゃんとお話しをしましょう」
これは、あの時から先送りにし続けてきた感情だ。それをぶつけるべき相手が目の前にいる。だから抑えられない。リンディが悪い訳ではないと分かっていたとしても。
「……今さら何を話すっていうんですか?」
それが目的だったはずだ。それなのに、零れ出たのは拒絶の言葉。
身体が震える。声が震える。喉が引き攣って痛い。感情のままに言葉を吐き出す事が、こんなにも辛いなんて初めて知った。
思い出すのは、もうすぐ六歳になるといったの頃のこと。お父さんが仕事で大けがを負った時のこと。それまで当たり前に続いていた毎日が、たった一本の電話で壊れてしまった。それでも光がいてくれたから、辛くはなかった。でも、もしもあの時、光がいなかったら。もっと辛い毎日だったはずだ。あの頃無理ばかりしていた恭也は身体を壊していたかもしれない。お母さんや美由紀も。それどころかお父さんは二度と家に帰って来なかったかもしれない。だから、高町光だけではなくて。『魔法使い』御神光は私たち家族にとってとても大切な存在なのだ。
「光君とあの子についてよ。特に光君はあんなに酷い火傷を負っているわ。早く見つけて治療をしないと。だから、もう一度だけ私達に協力してほしいの」
光の治療。それは確かに今すぐにでも必要な事だ。けれど、
「分かっています。だから、邪魔をしないでください」
リブロムと視線だけでやり取りをする。この魔術書があれば、光を治療する事が出来る。その、最後の確認だった。
「待って。あれだけの火傷よ。それに、魔法が関わっている。この世界の医療技術だけで対応できるかどうかは分からないわ。でも、私達なら――」
「大丈夫です。治し方なら、リブロム君が知って
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