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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
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のを感じる。
「こんなものをお前に押し付けた、その男が憎い」
 それに黒く異形化した腕が重なる。
 彼女の罪の証。彼女の生き様。自分の業の形。それがほんの僅かだけ混じり合う。
 痛みを感じるより先に、傷が癒えていくのが分かった。三百年の時をねじ伏せてなお、自分と彼女を隔てる呪い。今はそう思わずにはいられない。彼女達の美しい身体に無遠慮に残されたいくつもの傷跡。それを忌々しく感じるのは別にそれが理由だとは言わないが――それでも、意識させられる。
 自分の中には、不老不死の力を持った怪物が眠っているのだと。若返る事はあっても、朽ちる事はない。そんな事は分かっていた。
「貴方に孤独を押し付けた彼が憎い」
 彼女達は泣いているようだった。全てに耳をふさぎ、目を背けるようにその身体を掻き抱く。自分達の関係性すら曖昧なまま、それでも馴染んだその身体。それを抱いていれば孤独から逃げられる気がした。例え、錯覚だと分かっていても。気づかないふりが出来た。今までは、ずっと。彼女達がいてくれれば、それで良かった。
「いつか」
 喘ぐように。それでも優しく言い聞かせるように。彼女達が囁く。
「いつか。今よりもっと欲張りになって。そして、必ず見つけなさい」
 祈るように。懇願するように。呪うように。その声が延髄に響く。
「自分を犠牲にすれば全て救えると思ってる。そんな大バカ野郎の横っ面を引っ叩いて
救ってくれるような相手を」
 その言葉を覚えている。肉体を。記憶を。自分の名前すらも失って。
「……貴方に必要なのはもっと神の知恵だとか魔法の叡智だとか。そんな大げさなものじゃないわ。単純なものよ。何があっても。何が立ちはだかっても。どんな障害があったとしても。絶対に貴方の隣に居続けてくれる。それができる誰かよ」
「そうだ。絶対に切り捨てられないものがある限り、貴様は自分を切り捨てたりできないからな。そんな奴を見つけたなら――」
 彼女達の願いが叶う事など未来永劫ありえないと分かっていても、忘れることはできない。本物の不老不死の怪物となっても。永遠の時を彷徨うなかで何度も夢に見た。彼女達とただの人間として生きていく――そんな幻の日々を。
「私達が二人がかりでもできなかった事を、その誰かに託すわ。だから、きっと――」
 幸せになりなさい――その夜に最後に告げられた呪いの言葉。それは、永遠に消える事はない。永遠に消えることなく、戦場を彷徨う怪物を苛み続ける事になる。だが、それも悪くない。何故なら……この痛みこそが、彼女達と共に生きた証なのだから。
 それを抱えて永遠を生きていく。それがいずれ自分が選ぶことになる道だった。




『このドジボケバカアホ間抜けトンマ怒涛の運動オンチカメより遅くナマケモノに勝るドンクサさ――!』
「だってだって
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