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その魂に祝福を
魔石の時代
第四章
覚悟と選択の行方3
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り散らしながら、さらに間合いを詰めてくる。
(こうまで反撃の糸口が見つけられないなんて……)
 いっそ笑いだしたくなった。苛立ちや羞恥、嫉妬などはとっくに通り越している。全く、今この世界にいる魔導師は揃いも揃って怪物ばかりだ。
 高町なのは。天才的な――同じ魔導師として言わせてもらえば、むしろ天災じみた才能の持ち主。彼女の砲撃魔法は現時点でさえ、ふざけた威力を持っている。だが、今の彼女になら勝てる。もちろん、真正面から撃ち合って真っ向から火力でねじ伏せろと言われれば難しいが――それだけだ。あの金髪の少女の実力は正確には把握できていないが、おそらく負けはすまい。それは、単純に僕が御神光に勝てないのと同じ理由だ。
(彼は……少なくとも、今彼が使ってくる魔法は僕の魔法と比べてそれほど威力が高い訳じゃない)
 だが、それだけだ。術の制御や運用。状況に応じた使い分け。そして、必要とあればそれら全てのセオリーを切り捨てる見切り。彼の強さは才能なんて安っぽい言葉だけで成り立っている訳ではない。ついうっかりで逆転を許す様な甘さはない。
 御神光の力の本質は膨大な戦闘経験だ。だからこそ、今の僕には彼の予測を振り切れない。どんな手段を用いても、確実に一歩先を行かれる。退こうが詰めようが。攻めようが守ろうが。どこをどう動いてもいいように追いつめられる。これほどの戦闘経験を習得するに至った彼は、今まで一体どれだけの死線を潜りぬけてきたのか。
 そして、今。その身体を蝕む『魔物』は、彼が持つその卓越した殺人術を全く躊躇いなく叩き付けてくる。せめてもの救いは、正気ではない事か。海上で見せた――余裕たっぷりに見せつけられた、精錬された動きではない。もっとも、獣のようなその動きはそれはそれで厄介極りないが――それでも彼の本質を邪魔し、削り落としてくれている。だが、
(ダメだ。このままじゃ……)
 押し切られる。すでにバリアジャケットの何ヶ所かが斬り裂かれ、少なくない血が流れている。出血は体力を消耗させ、集中力を低下させ、身体の動きを鈍くする。今よりももう少しだけ身体が動かなくなれば、瞬く間に殺される。
 しかも、敵はこの怪物だけではなかった。
「クソッ! 酸か?」
 猫もどきが吐き出してきた何かがバリアジャケットにかかり、酷い匂いを放つ。それと同時、その液体によってバリアジャケットが蝕まれていく。魔力を帯びた酸と言ったところか。取りあえず猫の顔面を魔力光弾で吹き飛ばす。
「ええい、鬱陶しい!」
 次に襲ってきたのはネズミの群れだった。異形のネズミはどうやらそれの集合体だったようだ。死角から這い寄ってきて身体を駆け上がり齧りついてくる。瞬間的にバリアジャケットを喰い破れはしないが、いつまでもまとわりつかせておく訳にはいかない。
 広大な結界に物を言わせ、上空を無
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